アラカルト

1ヶ月記念によせて




午後3時を過ぎ、そろそろ日差しが陰り始める屋上で、土門とマリコは並んで京都の街並みに目を向けていた。

「ねぇ、土門さん。ついにこのサイト、開設1ヶ月ですって!管理人さんが小躍りして喜んでたわ」

「ふん!さっさと閉店かと思ったがな」

「もおっ!でも本当に、皆様のお陰よね」

マリコは長い睫毛を伏せて、しみじみという。

「なぁ、榊。このサイト、なんで『blue』っていうのか知ってるか? 」

何か思いついたらしい土門が、マリコへたずねた。

「それ!私聞きたかったのよ…。土門さん、知ってるの? 」

「ああ」

「なに、なに?教えて」

マリコは両手を組み、上目使いでお願いポーズをする。
一瞬、くらりと鼻血がでそうになった土門だったが、一つ咳払いをして態勢を立て直す。

「実はな……」

「うん?」

「管理人が青色が好きだからだ」

「……なーんだ」

「まぁ、まて。話は最後まで聞け」

土門は不服そうなマリコの頬をつつく。

「理由はそれだけじゃない。一説によると、『あお』という言葉は黒と白の中間色という意味を表す『間(アヒ)』からきているらしい。その『間(アヒ)』という字には“隣り合う”という意味がある……俺と、お前のようにな」

「土門さん……」

「もっとも、俺にはその『間』さえ必要ないが……」

土門は屋上の陰へマリコを誘導すると、胸元へ引き寄せ、自分の背中で彼女の姿を隠す。
わずかに漏れ聞こえるのは、マリコの切ない吐息のみ。


――― 隣り合うよりも、混じり合いたい……。




fin.


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