アラカルト(誕生石ver.)
17000番さまへのお礼
17000番を踏んでいただき、ありがとうございます!
*****
「マリコさん!」
「はい?」
「似合ってるわよ~♥」
「?」
「イ、ヤ、リ、ン、グ♪どうしたのかしら、それ?」
早月は自分の耳元を差しながら、ニヤリとする。
「え、ええと……」
「んっふっふっ。いいの、いいの。答えなくても分かってるから!」
「早月せんせいっ!」
マリコは顔から湯気が出そうなほど、真っ赤だ。
『マ、マリコさんたら!か、可愛すぎ~』
早月は一人でニヤニヤと百面相中だ。
この日、非番だったマリコは、早月にランチとショッピングに誘われた。
ちょっと小洒落たリストランテに行くから、おめかししてきてね!と早月に念を押されたので、マリコは土門がプレゼントしてくれたルビーのイヤリングを着けて来たのだ。
「それにしても意外よねー。土門さんて案外プレゼント魔だったのね~」
――――― そう言われてみれば……。
マリコは思い返してみる。
確かにアクセサリーに限らず、色々プレゼントされている気がした。
「ねー、ねー、マリコさん!」
ピコン!と早月のアンテナが反応した。
「マリコさんからも何か贈ってみたらどお?きっと喜ぶわよ~」
ムフフと人の悪い笑みを浮かべる早月に苦笑しながらも、マリコはちょっと考え出した。
そして、そんな二人の前にはうってつけのショップがあった。
次の日の夕方、マリコと土門は屋上にいた。
西日の眩しさを避けるように、柱の陰に立ったマリコは白衣のポケットから小さな紙袋を取り出した。
「土門さん、これ……」
「ん?何だ」
土門は渡された袋を開き、中身を取り出した。
途端に鮮やかな碧色が反射する。
ストラップの先に付けられた小さな丸い石がキラリと光った。
「どうしたんだ、これ?」
「それはペリドットっていうパワーストーンなの。『希望や発展』ていう意味らしいけど…。『悪魔を追い払う』ていう意味もあるんですって。『危険を追い払う』ていうお守り代わりにどうかしら?」
「ほぅ……。綺麗な色だな」
「ええ。男の人が持っていても違和感ないでしょう?」
「そうだな。……にしても、ちょっと留め具の部分が歪んでないか?」
「…………」
「榊?」
「……………たの」
「何だ?」
「……私が作ったの!」
マリコは恥ずかしそうに俯き、ぼそぼそと話し出す。
「アクセサリー作りの体験があったの……。それで…その……………土門さん?」
話の途中で、マリコは頭が重くなったのを感じた。
土門がマリコの頭を自分の顎の下に引き寄せたのだ。
「お前だと思って大切にする……」
コホンと咳払いまじりに、こちらもボソリと呟く。
マリコは土門の手に自分の手を重ねた。
重なり合う手のひらの中のペリドットは、これから始まる新緑の季節のように瑞々しく煌めいていた。
実はもう一つ、8月の誕生石には意味がある。
それは、『男女の幸福』……。
アクセサリー作りに悪戦苦闘するマリコの傍で、それとは知らずにペリドットを選んだ彼女のことを、早月はとても温かい眼差しで見つめていた。
もちろん、当の本人は知る由もないのだが…。
fin.