400番さまへ




今年の京都は冬の訪れが早かった。
寒がりのマリコには辛い季節だ。
珍しく電車で通勤したこの日、夕方からしんしんと雪が降りだした。

「あっ、手袋!」
帰りのホームで、科捜研に手袋を置き忘れたことに気づいた。
しかし、間もなく電車が到着するというアナウンスが流れ始めた。
マリコは、仕方なく手袋を諦めた。

電車内は暖房がよく効いていて暖かい。
でも、その暖かさが末端まで行き渡るにはまだ時間がかかりそうだった。
つり革に掴まるマリコの右手は冷えきり、爪の先は色を失っていた。

「……寒い」
左手の指先にはぁーと息を吹きかける。
「?」
「冷え性は相変わらずか?」

頭上から降りてくる声の主は、マリコの掴まるつり革へと手を伸ばす。
そして彼女の手を包むようにして、自分も掴まる。

「暖かいわ…」
マリコは体を少しだけ傾けて、土門に寄りかかる。
手のひらからじんわりと伝わる暖かさを、揺れる電車の振動に合わせて、二人はただじっと感じていた。



fin.




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