ミッションインポッシブル
そして、扉の向こうでは…。
壁に聴診器を当てた早月がニヤニヤと、それはもうニヤニヤと盗聴していた。
「マリコさん。言われた通りフォローはしたからね…ん?また呼び出しかしら?」
ポケット中でPHSが振動している。
「はい、はい。今出ますよ。マリコさん、土門さん、お幸せに〜♪」
早月は電話を片手にスキップ…もとい、急ぎ足で廊下を進んでいった。
翌朝、土門は藤倉に呼び出された。
「おはようござ……」
「すまん、土門!」
開口一番、深々頭を下げる上司に、土門は笑顔を見せた。
「顔を上げてください、部長。俺も榊も気にしていません」
「しかし…」
「それどころか、俺は感謝しています」
「どういうことだ?」
「実はあの後、榊にプロポーズしました」
「なに?それで?」
「結婚することになりました」
「そうか…。そうか………」
藤倉はふぅと息を吐き出した。
「少し肩の荷が下りたようだ。よかった。おめでとう」
「ありがとうございます。後ほど、改めて榊と報告に来ます」
「ああ。待っている」
「では、戻ります」
藤倉は土門の背中を見送る。
「今度はあいつが白で、俺が黒いスーツか。まるでオセロみたいだな」
藤倉はひとりごちる。
やはり石は裏返されてしまうのだ。正しいペアとなるように。
『何しょげてんだい?』
高笑いする声が聞こえた気がした。
藤倉は窓の外を眺める。
便りがないのは良い知らせとはいうが…。
無事に帰宅したのか、連絡ひとつ寄こさない薄情な母を思い浮かべ、息子は静かに苦笑した。
刑事部長室からの帰り、土門が屋上をのぞくとマリコがいた。
「やっぱりここか」
「土門さん!」
「今、部長に報告してきたぞ。俺たちのこと」
「そう。何か言ってた?」
「おめでとう、と祝福してくれた」
「部長にも早く誰か見つかると、お母さまも安心できるんでしょうけど」
「こればかりは縁だからな…わからん。もしかしたら明日にも出会える可能性だってあるぞ」
「うん。そうよね」
マリコは沈みそうな気分を持ち直す。
「ところで、ウェディングドレスのことだが」
「ドレス?」
「ああ。また俺に選ばせてくれくれないか?」
「いいけど、どうして?」
「うむ。それはな…」
土門はマリコの耳元でささやく。
「なっ!そんな理由なら却下よ」
マリコは真っ赤になって首を振る。
「どうして!脱がせやすそうなデザインにしないと初夜の記憶が作れないだろう?」
土門の新たなミッションの行方は…果たして?
以下、♪チャララ〜、チャララ〜(『スパイ大作戦』)の音楽でお楽しみください。
『例によって君と榊くんがドレス選びでイチャイチャしようとも、作者にはぜ〜んぶバレちゃうからそのつもりで。なお、このお話はここで終了する。成功を祈る。』
( ,,>з<)プッ❤
fin.
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