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「亜美さ〜ん、おはよう」

呂太はダダダーっと亜美に走り寄ると、そのまま勢いよく飛び……つこうとした瞬間、すっと一人の男が割り込んだ。

「橋口、おはよう」
「蒲原さん、おはよ♪」

ガシッと呂太は蒲原に抱きついた。

「離せっ!暑苦しい」
「ええ〜!蒲原さん、冷たい。今日はハグの日なんだよ」
「知ってるよ。だから慌てて阻止しに来たんじゃないか…」
「阻止?」
「いや、何でもない」


「まいど〜」
「先生だ!今日は早いんだね!おはよー」

新たな標的を見つけた呂太は、紙袋を持つ女医に突進していく。

ところが。
ぐいっと白衣の背中が引っ張られた。

「ととと…」

呂太は危うくバランスを崩しそうになった。

「大丈夫かい、呂太くん?」
「あれ?宇佐見さんが引っ張ったの?」
「なんのことだい?」

とぼけ顔の宇佐見は、スマートな身のこなしで呂太と早月の間に立ちふさがった。


「あら?風丘先生、おはようございます。もしかして鑑定書、できたんですか?」
「ほやほやを届けに来たわよ」

呂太は早月の取り出した封筒をひょいと取り上げると、今度はマリコのもとへ向かう。

「はい、マリコさん♪」

封筒を渡しつつ、呂太は広げた腕をマリコに伸ばした。

あいにくここに土門はいない。
宇佐見と蒲原はハラハラと事の成り行きを見守るしかなかった。

「うわっ!?なにっ???」

指先がしびれるような感覚に、呂太は文字通り飛び退いた。

「痴漢撃退グッズよ」
「マリコさん、何でそんなもの持ってるのさ?」
「土門さんに、今日近づいてくる男性には例外なく問答無用で使え、と渡されたのよ」

『なんでかしらねー?』などと、マリコは他人事だが、宇佐見と蒲原は、土門の周到さにしきりと感心していた。


夕方の屋上には、並んだ影が2つ。

「土門さん、今日がハグの日だって知ってたの?」

マリコはそれを、今朝の一件から早月に教えられた。

「まあな」
「ふぅん」
「ところで、撃退グッズは役に立ったか?」
「ええ」
「そりゃ良かった」

そんな会話をしながら、土門は段々とマリコに近づいてくる。

「おい!」

ビリリと痛む手を引っ込めた。

「なあに?」
「何で俺に使うんだ!」

マリコの手にはその撃退グッズが握られていたのだ。

「土門さんが言ったんでしょう?私に近づく男の人には例外なく、問答無用で使えって」
「だからって、お前…。くそっ!」

イラつく土門を見て、マリコはクスリと笑ってしまった。
そして撃退グッズを白衣のポケットにしまう。

「近づいてくる男の人は撃退するけど、私から近づくなら……いいんでしょ?」

ふわりと飛びついてくる華奢な体を、土門はしっかり抱きとめた。


(こっそり)
管「送信ありがとうございました!(≧∇≦)管理人の頑張る源です。ぜひまたお越しください(^^)」


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