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今日は5月16日。
マリコは明日、非番だ。
その予定を何かのはずみで早月に話していたことを、マリコ自身はすっかり忘れていた。

すると夕方になって、マリコのスマホが鳴り出した。
一度目は鑑定で手が離せず、放っておいた。
二度目は席を外していた。
しかし、スマホはしつこく三度目の着信音を鳴らす。

「もしもし?」

マリコは相手を確認することもなく、電子顕微鏡を覗き込む片手間に、電話に出た。

『マリコさん、やっと繋がった!』

聞こえてきたのは、早月の声だった。

「先生、どうしたんですか?」

そこから二人の会話はひそひそと続き、最後には「先生っ!」とマリコの叫び声で通話を終えたのだった。


さて、その晩。
マリコの部屋へ来客が現れた。

『ただいま』と慣れた様子で上がりこんだ客人は、これまた勝手知ったる具合にシャワーを浴び、家主のいる寝室へ入ってきた。

「榊…」

そして、伸ばされる手と、近づく顔。

「ダメ!」

しかし、その顔はぐぃーと押し戻された。

「いてっ。なんだ?」
「き、今日はダメなの」
「何がダメなんだ?明日は非番だろ?」
「とにかく、ダメなものはダメなの」
「体調でも悪いのか?」
「そ、そう!そうなの」
「……絶対に嘘だな。刑事に嘘をつくとはいい度胸だ。こうなったら、夜通しお前の体を取り調べるしかないな」
「え!?」
「それが嫌なら正直に吐け」
「そ、そんな……」
「今なら、事と次第によっては、お前の願いを聞いてやらんこともない」
「本当?」
「ああ」
「実は、早月先生がね……」
「風丘先生?」

土門は嫌な予感がした。

「昔の文献では、5月16日は『性交禁忌の日』(※)と言われているんですって。もし、その…破ると3年以内に死んじゃうって教えてくれたの」

土門は本気で脱力した。

『そんな迷信吹き込む医者がどこにいるんだ?』とげんなりし。

「お前、科学者のくせに、そんな非科学的な言い伝えを信じるのか?」
「だって……」

渋るマリコの体を、土門はベッドの上に座ったまま抱き寄せた。

「土門さん!」
「こうしているだけならいいだろう?」

その言葉に、明らかにマリコはホッとした。
ところが…。

しばらくすると、土門の手がもぞもぞと動き出し、パジャマの裾から潜り込む。

「土門さん、ダメよ!」
「榊、時計を見てみろ」
「え?」

秒針は深夜0時を、数秒過ぎていた。

「今日はもう17日だ。今からは『性交“推進”の日』だ。というわけで、思う存分………」

『覚悟しろ』と言わんばかりに、その夜。
マリコの体は、土門の手と唇によって隅々まで取り調べられたのだった。


※江戸時代の艶本『艶話枕筥(つやばなしまくらばこ)』に記されている言い伝えだそうです。


(こっそり)
管「送信ありがとうございました!(≧∇≦)管理人の頑張る源です。ぜひまたお越しください(^^)」


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