thanks!《3》
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(コメントの返信は『Re:』ページをご覧ください)
今日は4月1日。
新年度の始まりだ。
土門は糊の効いたワイシャツに、手慣れた様子で臙脂のネクタイをシュルリと締める。
そして最後にジャケットを羽織ると、革靴の底を鳴らし、職場へ向かった。
昼下り。
屋上のベンチに腰掛けて資料に目を通していると、耳馴れた声に呼ばれた。
「着たきりスズメさん?」
「もしかして俺のことか?」
「他に誰かいるかしら?」
「生憎だが、着たきりスズメは卒業した。今日は新しいスーツだ」
「……………」
「何だ?」
「ううん。別にくたびれたスーツのままでもいいのに」
「はあ?」
言うに事欠いて、くたびれたスーツとは…“失礼な奴だ”と土門はいささかムッとした。
「別にいいだろう?新しいスーツのほうがパリッとして気持ちも新たになるんだ」
「いいけど。新しいスーツ姿の土門さんだと………」
マリコは口の中でもごもごと喋るので、土門には聞き取れない。
「何だ?言いたいことがあるなら、はっきり言え」
「新しいスーツ姿の土門さんは、その……。色んな人の目を引きそうで。何となく…嫌なの」
「……………」
土門は呆気に取られた。
一瞬、「これはエイプリルフールか?」と疑いもしたが、そっぽを向くマリコの耳は赤い。
「一応確かめるが、それは俺が他の女の目に留まるかもしれないと、心配しているのか?」
「い、いちいち説明しなくていいわよっ!💢」
「もう一つ確かめるが、それはつまり、新しいスーツ姿の俺が格好いいという訳か?」
「だーかーらー。きゃぁ!」
マリコの細い体は、軽々と土門の膝の上に乗せられた。
「安心しろ。俺が誰の目に留まろうと、俺が見ているのはお前だけだ」
「土門さん…」
「それにしてもお前からそんなセリフが聞けるとはな!新しいスーツも着てみるもんだ。……なあ」
「なあに?」
「本当はどうなんだ?」
「何が?」
「このスーツ」
「……………」
「ん?」
土門はマリコの口元へ耳を寄せる。
「似合ってる……すごく」
やっぱりエイプリルフールかもしれない。
でも。
それならそれに乗っかってやろうと、土門はマリコへ「ありがとう」と礼を返した。
その、鴇色(ときいろ)の唇へ。
(こっそり)
管「送信ありがとうございました!(≧∇≦)管理人の頑張る源です。ぜひまたお越しください(^^)」
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今日は4月1日。
新年度の始まりだ。
土門は糊の効いたワイシャツに、手慣れた様子で臙脂のネクタイをシュルリと締める。
そして最後にジャケットを羽織ると、革靴の底を鳴らし、職場へ向かった。
昼下り。
屋上のベンチに腰掛けて資料に目を通していると、耳馴れた声に呼ばれた。
「着たきりスズメさん?」
「もしかして俺のことか?」
「他に誰かいるかしら?」
「生憎だが、着たきりスズメは卒業した。今日は新しいスーツだ」
「……………」
「何だ?」
「ううん。別にくたびれたスーツのままでもいいのに」
「はあ?」
言うに事欠いて、くたびれたスーツとは…“失礼な奴だ”と土門はいささかムッとした。
「別にいいだろう?新しいスーツのほうがパリッとして気持ちも新たになるんだ」
「いいけど。新しいスーツ姿の土門さんだと………」
マリコは口の中でもごもごと喋るので、土門には聞き取れない。
「何だ?言いたいことがあるなら、はっきり言え」
「新しいスーツ姿の土門さんは、その……。色んな人の目を引きそうで。何となく…嫌なの」
「……………」
土門は呆気に取られた。
一瞬、「これはエイプリルフールか?」と疑いもしたが、そっぽを向くマリコの耳は赤い。
「一応確かめるが、それは俺が他の女の目に留まるかもしれないと、心配しているのか?」
「い、いちいち説明しなくていいわよっ!💢」
「もう一つ確かめるが、それはつまり、新しいスーツ姿の俺が格好いいという訳か?」
「だーかーらー。きゃぁ!」
マリコの細い体は、軽々と土門の膝の上に乗せられた。
「安心しろ。俺が誰の目に留まろうと、俺が見ているのはお前だけだ」
「土門さん…」
「それにしてもお前からそんなセリフが聞けるとはな!新しいスーツも着てみるもんだ。……なあ」
「なあに?」
「本当はどうなんだ?」
「何が?」
「このスーツ」
「……………」
「ん?」
土門はマリコの口元へ耳を寄せる。
「似合ってる……すごく」
やっぱりエイプリルフールかもしれない。
でも。
それならそれに乗っかってやろうと、土門はマリコへ「ありがとう」と礼を返した。
その、鴇色(ときいろ)の唇へ。
(こっそり)
管「送信ありがとうございました!(≧∇≦)管理人の頑張る源です。ぜひまたお越しください(^^)」