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拝啓

春の陽気が待ち遠しい今日この頃、ご家族皆さまお元気でしょうか。

(中略)

思えば、私も随分と長い人生を過ごして参りました。
その間には、嬉しいこと、驚くこと、悩むこと、様々な出来事がありました。
それらを私は妻と共に喜びあったり、手を取り合ったりしながら乗り越えてきました。
あなた達……

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「何をしているの?」

マリコは背中を丸めて机に向かう男に問いかけた。

「ん?手紙を書いている」
「珍しいわね!」
「ああ。これをもらってな」

男が指差したのは、テーブルに置かれた便箋。
上質な和紙に、沈丁花が品よく描かれている。

「まあ!素敵ねぇ」
「だろう?」
「誰にもらったの?」
「気になるのか?」

男の眉を上げる癖は歳をとっても変わらない。

「べ、別に…」

そして素直になれないこちらも、昔のままだ。

光翼ひかるにもらった」
「光翼に?」
「ああ。だから、手紙を書いているんだ」
「光翼へ?」
「いや。もうずっと昔のふたりに」

「どういうこと?」
「今日は夫婦の日らしいからな」
「え?11月22日ではなくて?」
「それは“いい”夫婦の日だろう。夫婦はいい時ばかりじゃない。でもこうして長年……」

男はマリコ…自分の妻の、少し乾燥した手を握った。

「想いはそのままに。いや、もっと大きく、深くなりながら寄り添い続けることができている」
「……………」

妻は歳を経て涙もろさを増したのか、握られた手とは反対の手で目頭を押さえた。

「そのことを、ずっと昔の俺たちに伝えられたらと思ってな。過去へ手紙を書いていたんだ。おかしいか?」
「薫さん…」

妻は夫の名を呼び、いいえ、と首を振る。

彼女が便箋をのぞくと、手紙はこう続いていた。

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あなた達にはこれから試練の時も待っているでしょう。
けれど、どんな時でも幸せは隣にいます。
その存在がありさすれば、必ず乗り越えられることを忘れないでください。

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そして。

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私は、できるなら妻を看取ってから旅立ちたいと思っています。
それは彼女をひとり残し、悲しませることはしたくないからです。
そんな風に思える妻に出会えた私は、とても幸せです。

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そう、結ばれていた。


※2月2日は「夫婦の日」だそうです。
※光翼とは?…よろしければ「『父になる』ということ。『母になる』ということ。」をご覧くださいm(_ _)m


(こっそり)
管「送信ありがとうございました!(≧∇≦)管理人の頑張る源です。ぜひまたお越しください(^^)」


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