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「なんでここにいるの?馬鹿!』
「おいおい、随分なご挨拶だな」

激高するマリコとは対象的に、土門はのんびり答える。

「土門さん、今がどんな状況かわかってるの?」
「この部屋、もうすぐ毒ガスが充満するんだろ?」
「わかっててなんで…」

二人がいる、もとい閉じ込められているのは四方を壁に囲まれた箱部屋だ。

マリコはこの日、新設された民間の研究所の内覧会を訪れていた。その中の実験室を見学していた最中、突然扉が閉まり、ロックされてしまったのだ。
たまたまマリコを迎えに来ていた土門は、思わず閉じる扉の隙間に滑り込んだ。
かくして、二人は毒ガス実験室に閉じ込められるハメになったのだ。

先程から順番に天井の送風口が開き、モーター音が不気味に鳴りはじめた。

「もうすぐあそこから毒ガスが流れてくるわ。なんとか脱出する方法はないかしら?」

マリコは壁を調べるが、仕掛けも何も見当たらない。

「万事休すね………」

ため息をつくマリコ。

「仕方ないさ。俺はもう腹を括った」
「そうね…。最後の最期まで土門さんと一緒なのも何かの縁ね」
「遺言でも残すか?」
「遺言か…土門さんと一緒のお墓で供養してください、なんてどう?」

こんな時だからこそ、マリコは少しでも不安を吹き飛ばそうとそんな言葉を口にした。
ところが。

「ほう。俺と一緒の墓か?ということは、夫婦にならんといかんなぁ」
「え?」
「そうと決まれば、善は急げだ。こんな所で油を売ってる場合じゃないな」
「土門さん?何を言ってるの?」
「ヘンだと思わないか?」
「?」
「毒ガスなんて出てこないぞ」
「そういえば…」

閉じ込められてから、もう十分近く経つだろう。

「土門さん、もしかして何か知ってるの?」
「お前、入口の貼り紙見てないのか?」
「貼り紙?そんなものあったかしら」
「あった。自分の目で確かめてみろ」

土門の言葉と同時に、ピッと電子音が鳴り、自動で扉が開いた。

「開いたわ!」

マリコは部屋の外へ走り出る。
扉の隣に、土門が言った通り貼り紙がされていた。

『本日、毒ガス実験室稼働体験日』

その下には実施時間が数回記されていた。

「……体験だったのね!」
「そそっかしい奴だな」

土門はくくっと笑う。
それにカチンときたのはマリコだ。

「何よ!土門さんも知っていたのに、知らないふりをするなんて酷いわ」
「今日は、4月1日だからな。許されるだろ?」

しれっと答える土門に、マリコは「あっ!」と口を開く。

「もう悪趣味よ!」
「逆切れか?そんなことより、行くぞ」
「どこへ?」
「役所だ」
「何しに?」
「一緒の墓に入るんだろ?」
「本気なの?」
「もちろん。お前みたいな跳ねっ返りで、そそっかしい奴、俺以外の手に負えるか!」

ためらうマリコに土門はぐっと手を伸ばした。

「ほら、榊!」

その手のひらには、夢と希望と優しさと。
溢れんばかりの愛情も詰まっているに違いない。
だけど。

「今日はエイプリルフールなのよね?」

いくつになっても、空気の読めない恋愛オンチでも。
それでもマリコだって、女性なのだ。
ここぞというときは、やっぱり言葉が欲しい。

「嘘は1つだけで十分だろ?」

土門は立ち止まったままのマリコを引き寄せる。

「俺の嫁さんになってくれ」
「……はい」

震える声でマリコはうなずいた。

嘘から出た真。

パチ、パチ、パチ、パチ!
突然のプロポーズ劇に遭遇した内覧会参加者は、二人に温かい拍手を送る。

急に恥ずかしくなった二人は、逃げるようにその場を離れた。
行き先はもちろん。
市役所窓口(笑)


(こっそり)
管「送信ありがとうございました!(≧∇≦)管理人の頑張る源です。ぜひまたお越しください(^^)」


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