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「サンキュー・カード?」

マリコは首をかしげる。

「そう。3月9日の語呂合わせで、今日は感謝の日なんだって。そこで署内でお世話になった人や感謝している人にサンキュー・カードを送ることになったんだ。ちなみにもらった枚数が多い人は、特典として食券がもらえるよ」

仕事前のミーティングで、日野はそう説明しながら各自にカードを配る。

「1枚だけなんですか?」
「そうだよ。渡せるのも今日だけ。だからよく考えて渡す相手を選んでね」
「わかりました」
「ラジャーです」
「はい」

それぞれがカードの裏表を見ながら返事をする。

「よし。それじゃあ、仕事を始めよう」


昼休みになると、ちらほらカードの受け渡しシーンが目立つようになってきた。女性職員などは、同僚や友人の間でちょっとしたお菓子と一緒にカードを手渡し、会話が弾んでいた。

では、お馴染みのメンバーは…というと。
宇佐見は日野所長へカードを渡した。本当なら某法医学者に渡したかったが、残念ながら彼女は京都府警の職員ではない。
そして日野もまた、お返しに宇佐見へカードを渡した。胃痛の多い日々を宇佐見のお茶が癒やしてくれているからだ。

亜美はこっそり蒲原を廊下へ呼び出し、カードを渡したようだ。ただお団子頭が壁から覗いていたため、周囲にはバレてしまっていたのだが、そこは『若い二人を見守っていこう』…と関係各所で大人の対応がなされた。

意外なところでは、君嶋のカードの行方だろうか。
彼のカードはマリコの手にあった。何かしら思うところがあるのか、まだ謎の多い新人である。

そして結果、食券を手に入れたのは…。

「私でいいんですかね?」

灯台下暗し。食堂のおばちゃんであった。大多数の京都府警職員の胃袋を満たし、人々の安心・安全を守る縁の下の力持ちだ。
職員からの拍手とともに、食券を贈られた。

「私は使わないんですけどねぇ…」

そりゃ、そうだ(笑)
後々、おばちゃんはもらった食券を食べざかりの若い職員たちにこっそり配っていたとか、いないとか。


では、あの二人のカードはどうなったのだろうか…。

「所長にカードを渡したら、『土門さんじゃなくていいのかい?』なんて言われたわ」
「俺も。蒲原のヤツ、驚きすぎて目玉が落ちそうになってたな」

マリコは吹き出し、土門は苦笑している。

「お前にはカードじゃなくて、直接感謝を伝えたいと思ってな」
「あら!偶然ね。私もよ」

そういうと、マリコは両手を土門の首に回した。
二人は照れくさそうに見つめ合って、微笑んで。

「土門さん、いつもありがとう」
「おう。俺も、お前にはいつも感謝してる…」

1日だけ、1枚だけのカードでは足りない気持ちを二人はキスに込めて贈りあう。

何時でも。何度でも。


(こっそり)
管「送信ありがとうございました!(≧∇≦)管理人の頑張る源です。ぜひまたお越しください(^^)」


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