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『あなたにとっての存在意義とは?』

土門は新聞のコラムに目を留めた。
今日10月1日は、“大切な問いに向き合う日”なのだそうだ。
10(と)月1(い)日という語呂合わせから、昨年制定されたばかりの新しい記念日らしい。

コラムニストによれば、その人にとっての存在意義は年齢、性別、生活環境といった様々な要素により変化していくことが多いという。
もちろん、長年変わらず芯を通す人もいるはずだ。

『では自分はどうだろう?』
当然、土門はそう考えた。

犯罪の撲滅。
遺族の救済。

その目標は刑事を志したときから変わらない。
ただそれが生きる価値とまで言い切れるのか…土門の気持は揺れていた。

「あいつはどうなんだろうな?」

ふと、答えを聞きたくなった。
その足で土門は屋上へ向う。
なんとなく…居る気がしたのだ。

「よお!やっぱりいたな」

マリコは振り返った。

「科捜研へ行ったの?」
「いや。何となくここに居る気がしてな。勘が当たったな」
「土門さんたら、まるでエスパーね。私に何か用?」
「ああ。一つ、質問してもいいか?」
「え?ええ。どうぞ」
「榊。お前にとっての存在意義って何だ?」
「急にどうしたの?」
「今日は“大切な問いに向き合う日”らしい。俺はこの問いに対するお前の答えを知りたいんだ」
「ふーん」
「やっぱり、科学の謎を解き明かすとか、真理の探求とかか?」
「それは…そうできたら科学者として最高でしょうね。土門さんはどうなの?」
「それがな…。どうもしっくりくる意義が見つからん。それで、さっきも言ったように、お前の答えを聞いてみたくなったんだ」

『なに、それ』とマリコは笑った。

「そんなに難しく考えなくてもいいんじゃない?存在意義って、『生きているのは何の為か?』ってことでしょう?」
「まあ、そうだな」
「だったら私は一つ。土門さんと科捜研のみんなと、この仕事を続けていくことよ」

マリコの言葉に、土門は胸のつかえがストンと落ちたようだった。

「俺もだ。俺もお前や蒲原たちと刑事を続けていきたいな」

マリコは風に巻き上がる髪を押さえながら、静かに微笑んだ。

『存在意義は変化していくこともある。』
土門はコラムの内容を思い出した。
いつかこの仕事を続けるという存在意義をまっとうしたら、その次に掲げる意義は何だろう。
残りの人生を賭けるほどの価値。

土門は街並みに目を向けるマリコの後ろ姿を見つめた。

それは、もう目の前にあるかもしれない。



(こっそり)
管「送信ありがとうございました!(≧∇≦)管理人の頑張る源です。ぜひまたお越しください(^^)」


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