you are my …
しかしそれから3日と空けず事態は急変した。
雪絵が事故に遭ったのだ。外出の帰り、プレーキの故障した自動車にはねられたのだ。命に別状はないと聞いたものの、土門少尉は雪絵のもとへ駆けつけた。
「雪絵さん!」
病院のベッドに横たわる雪絵は、右腕を固定され、頭にも包帯が巻かれていた。
「土門少尉…」
「大丈夫ですか?」
近づいてくる少尉の姿をみで、雪絵はポロポロと涙を零した。
「怖かったです………」
「雪絵さん」
「少尉、怖かったです!」
雪絵は自由になる左手を伸ばして、少尉の軍服を握りしめた。
「命が無事でよかった。きっとお父様が護ってくれたんですよ」
少尉は雪絵の手をポンポンと優しく叩いた。
「何か飲み物をもらってきましょう」
雪絵を落ち着かせるためにそう提案した少尉だったが、雪絵は首を振ると少尉の軍服を強く引いた。
「どこにも行かないでください。ここに…側にいてください」
「雪絵さん…」
少尉は近くのパイプ椅子に腰を下ろした。
「退院はいつになりそうですか?」
「お医者様の話では、明後日には退院できるそうです」
「そうですか。そのまま家に戻る予定ですか?」
「はい」
「しかし、その腕では何かと不便でしょう…」
「でも、もう父はいませんし、親戚も遠方ですから」
「……………」
そう聞いて、少尉の気持ちは動いた。雪絵は恩人の娘なのだ。知らんふりをするような、そんな不人情な真似は陸軍将校としても、男としても土門少尉にはできなかった。
「もし良ければ、腕の包帯が取れるまで自分が手伝いましょうか?」
「え?」
「日中は勤務があるので無理ですが、しばらく住み込みで手伝いますよ」
そう言ってから、土門少尉は大切なことに気づいた。
「いや、若いお嬢さんの家に自分のような男が居ては、いらぬ噂が立ってしまうか…」
「だ、大丈夫です!少尉が居てくれたら、心強いです。防犯にもなりますし。軍人さんなら皆も好奇の目を向けたりしないと思います」
「そうですか?雪絵さんがいいなら、そうしましょう」
「ありがとうございます!」
雪絵の頬は薔薇色に輝いた。