『密着!どもマリ24時』(マリキャン編)

in the auto campsite ③




それから二人は更にいくつかのテントを観察したが、どうにもそれらしい集団は見当たらない。
唯一怪しそうなバイカーがいたが、彼は先ほど荷物をまとめて帰っていった。

「本当に売人なんていると思うか?」

「それらしい人は見当たらないわよね…」

「榊、ちょっと待て。蒲原か?」

土門は耳元に手を当てる。

『土門さん!』

イヤモニからは切羽詰まった蒲原の声が流れてきた。

『取り引き現場がわかりました』

「ここじゃないのか?」

『はい。“オートキャンプ”という名前の店だったんです!』

「わかった、すぐに向かう」

『いえ。土門さんはこのまま残ってください』

「なぜだ?」

『複数に別れて取引を行う可能性もあるからです。これは部長命令です!』

「…わかった。しかし、何かあればすぐに呼べよ」

『はい!』

通話が切れると、土門は、蒲原との会話をマリコへ説明した。

「そう。それじゃあ、連絡がくるまでは待機ね」

「ああ。腹も減ったし、飯の準備でも始めるか」

「いいの?そんな呑気に…」

「どうせレトルトだからな。呼び出されてもすぐに行ける」

「それもそうね」




結局、取ひ引きは蒲原たちが探り当てた店で行われていたようだ。
夜の9時過ぎに、「無事に全員確保した」という知らせを受け、土門とマリコもほっとした。


「榊、家に帰るか?」

もうキャンプ場に泊まる必要は無くなったのだ。

「土門さんはどうするの?」

「テントを片付けるのは明日の朝になるからな。俺はこのまま泊まる。お前は自分の家が良ければ送っていくぞ」

「そうね…」

マリコは思案した。

「今夜は泊まるつもりで支度もしてきたし、私も残るわ」

「そうか」

ぶっきらぼうな返事ながら、土門は嬉しそうだ。

そんな顔を見れただけで、マリコも何となく幸せな気分になった。

「土門さん、見て!」

マリコは頭上を指差す。

「綺麗な星空ね」

キャンプ場の澄んだ空気と、ランタンだけの明かりは、夜空をより暗く、星の煌きをより明るく見せてくれる。

「ああ…」

どちらからともなく、二人は自然と手を重ね合わせ。
そして、しばらく星空を眺めた後で、静かにテントへと戻っていった。



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