続いていく二人(最終話編)



「今日までやってこられたのは、みんながいたから…。みんながいてくれるから、ここまでこられたの。だから…」

清々しい笑顔のマリコ。

「今まで本当にありがとう」


その言葉を聞き届けると、メンバーたちは歩き出した。

先頭を行くイケメン二人は、じゃれ合いながら屋上の扉を開けた。
そんな二人を楽しげに見守り、宇佐見と亜美もその扉を通り過ぎた。
さらにその後ろからは、『やれやれ』とつるりとした頭を撫でながら日野が続く。
土門は春めいて強くなった日差しに、眩しそうに目を細め、屋上を出た。

ふと、振り返るとマリコはまだ屋上で立ち尽くしていた。

白衣の背中は真っすぐで、その芯の通った姿はマリコのブレない性格そのものだ。


「榊、どうした?」

ところが、振り返ったマリコは、何だか迷子のように頼りなげな表情をしていた。

「うん。何だか…」

答える声も弱々しい。

「おいおい、俺は少し休めと言っただけだぞ?」

「そう、だけど…」

「お前にはまだまだ働いてもらわんとな。辞められたら京都府警の損失だ」

「……何より、俺が困る」

柄にもないと思いながらも、土門は素直に口にした。

「土門さん、…ありがとう」

それがこれまでの感謝の言葉だということは分かる。
だからこそ、土門は聞こえないふりをした。

「ん?何か言ったか?」

「だから……」

もう一度言いかけたマリコの腕を、土門は強く引いた。

礼などいらない。
代わりに笑ってくれればそれでいい。
いつものように、屋上ここで。
俺の隣で。


「行くぞ。榊」

風に冷えたその手に、温もりを。


パタン、と扉が閉まる一瞬。

2つの手のひらはしっかりと繋がっていた。



屋上は静かに二人を見送る。

人影が途絶えても、また。
明日も同じ風が吹くだろう。

いつでも二人が戻ってこられるように。


“to be continued…”



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