旅路



屋上ここは何時だって変わらない。
同じ匂い、同じ風。

それでも。
目には見えずとも何かが、何処かが少しずつ変わっているのだろう。

それが時の流れというものだ。


土門は見慣れた町並みに目を向けた。

果てしないと思っていた時間に、いつか終わりがくるなんて知らなかった。
思いもしなかった。
いや、思いたくなかったのかもしれない。

でも。
それを知ったことで、今この一瞬が何より愛おしい。

俺たちは、先の長い人生たびの途中にいる。
その道のりには、誰かを愛したり、何かを忘れたり、色々あるだろう。

だけど、いつかはこの日、この瞬間さえも懐かしんで。
笑いあうだろう。
愛しあうだろう。

お前と、お前の愛するもの全てを。

「なあ、榊?」


1/3ページ
スキ