旅路
同じ匂い、同じ風。
それでも。
目には見えずとも何かが、何処かが少しずつ変わっているのだろう。
それが時の流れというものだ。
土門は見慣れた町並みに目を向けた。
果てしないと思っていた時間に、いつか終わりがくるなんて知らなかった。
思いもしなかった。
いや、思いたくなかったのかもしれない。
でも。
それを知ったことで、今この一瞬が何より愛おしい。
俺たちは、先の長い
その道のりには、誰かを愛したり、何かを忘れたり、色々あるだろう。
だけど、いつかはこの日、この瞬間さえも懐かしんで。
笑いあうだろう。
愛しあうだろう。
お前と、お前の愛するもの全てを。
「なあ、榊?」
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