おくる言葉



その夜。
マリコはいずみとの電話のやりとりを土門に話した。

「お袋さんには敵わんな」

ポリポリと頭を掻く土門に、マリコは笑う。

「本当。何もかもお見通しなんだもの」

「何もかも…か」

ふと考え込む土門。

「土門さん?」

「お袋さんの予言は当たるかもしれんな」

「何のこと?」

「お前が母親になるところ、俺も見たくなった」

「え?な、何よ、突然」

「突然なんかじゃないぞ。お前とこうなってから、俺はずっと考えていた」

こうなって…とは、どうやら二人でシーツに包まるような関係のことらしい。

「そうなの!?」

「当たり前だ。もちろんお前の意思を尊重するつもりだが…お前の“お母さん”姿も悪くない」

「土門さん、わかってるの?私が“お母さん”なら、土門さんは“お父さん”よ?」

「お前なぁ…。俺以外に誰が“お父さん”になるんだよ…」

土門は呆れ顔だ。

「だって。無理だって、思ってたし…」

「決めつけるな。お前の悪い癖だ。いつも言ってるだろう。俺に話せ、嬉しいこと、辛いこと、不安なこと…全部だ」

「うん。うん。…土門さん、ありがとう」

感極まり、土門に抱きつくマリコ。

「お、おい、榊!今の状況ってもんをわかってるのか!?」

今の状況とは、どうやら…以下省略。

土門の叫びと共に、むくむくと元気を取り戻す別枠のひとり息子。

「あら…」

「あら、じゃない。責任とれよ!」

「もちろんよ」

「な、なに?」

まさかの返事に、土門の声が裏返る。

そのままマリコに押し倒されて、土門はいいようにされてしまうのか。
それとも…?

「土門さん、大好きよ」

どうやら今宵は、前者のようだ。



fin.


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