『科捜研の榊さんが若い男と歩いていた』

瞬く間に広がった噂は、間もなく土門の耳にも届いた。

あいつが誰といようと、知ったことではない。
それなのに、なんでこんなにムシャクシャするんだ。

当たりどころが見つからずイラついていた土門の前に、噂の本人が現れた。
無理やりマリコを車に乗せると、土門はマリコをシートに押し倒した。チラリと過る後悔の念を飲み込み、土門は目の前の唇を奪う。

最低なことだとわかっている。
それでも、この唇と存在をどうしても独占したい。
あんな噂を聞いた今だからこそ。

土門はマリコに覆いかぶさり、さらに深く味わう。

拒否されるだろう、そう覚悟していたのに。

「もっと」とねだるように、土門の背中にマリコが腕を回した。

土門は口づけを解き、組み敷いたマリコの耳に囁く。

「わかっているのか？もう止まれない」