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初めはほんの些細なすれ違いだった。約束の時間を間違えたとか、勘違いだとか、確かそんな程度の言い争いだったはずだ。けれど頑固な二人は互いに譲らず、そこから段々と溝が深まり、いつの間にか大喧嘩に発展してしまった。
今日こそ謝ろう。
二人ともにそう決意して屋上へやってきたはずなのに、顔を合わせれば、やっぱり憎まれ口をきいてしまう。
「もういい。仕事に戻るわ」
不機嫌顔でマリコは扉へ向かう。
土門はとっさにマリコの両腕を掴むと、壁に押し付けた。
「土門さん!?」
驚いたマリコは「離して」ともがく。
土門は構わずマリコの唇を奪った。
角度を変えては重なり、深く探られる。
「…っは……」
ようやく唇が離れると、マリコは艶めく息を吐き、熱の篭った目で土門を見つめて来た。
――― すまん。
――― ごめんなさい。
言葉はいらない。