樹ダイアリー



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今日は少しだけ気分がいい。
風が心地良いからだろうか。
今頃、マリコくんはどうしているだろう?
私のことを怒っているだろうか?
心配しているだろうか?
それとも、実験に集中しているかもしれない。
できれば、そうであって欲しい。
どうか、私のことは…。

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この日はここで途切れている。
二人はまた次のページをめくった。

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この窓から、満開の桜が見える。

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書き出しを読んで、土門とマリコは窓から外を見た。
確かに、一本の大きな黒い幹の木が見える。

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私の名前である『樹』。
『樹』という字は、その通り樹木を意味する。
は冬にその葉を散らし枯れてゆく。
しかし、春が来ればまた新たな命を宿し、緑に芽吹く。
私ものようでありたかった。
幾とせもめぐる季節を、君とともに迎え、過ごせたら…。
ああ、けれど、

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尻切れトンボで終わった日記は、次が最後だった。


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