3年目の浮気?



「榊。俺はこれから被害者の職場へ聞き込みに行くが、お前は……」

『どうする?』と聞くまでもないため、土門は以下を省略する。

「もちろん、行くわ」

予想通りの返事に、土門は頷く。
二人はともに、駐車場へ向かった。
しかし、早くもここで予想外の出来事が発生した。

「あ!見つけたわ。薫さぁ〜ん♡」

甘える呼び声にぎょっとして、土門は立ち止まる。

向こうから手を振りながら若い女が近づき、土門に飛びついた。
豊かなバストを土門の腕に押し付けるようにしながら、腕を絡め、しなだれかかる。

「真由美!仕事中は来るなと言っただろう!」

「だってぇ」

真由美と呼ばれた女はしなを作り、土門に腰をすりつける。

「とにかく!俺は今から聞き込みだ。先に家に帰れ!いいな?」

「えー」

女は頬を膨らませ、不満げだ。

「すまん、榊。行こう」

マリコは二つの点で驚き、固まっていた。
一つは呼び名だ。
土門のことを『薫』と呼ぶ女性は珍しい。
また、土門がそう呼ばせていることも意外だ。
しかし何より…。
これまで、土門が女性を下の名前で呼ぶことはほとんどなかった。
マリコの記憶でも夕雨子と水絵くらいだろうか。

もう一つは「先に家に帰れ!」という土門のセリフだ。
その口ぶりだと、この女性は今、土門の家にいる…ということになる。

――――― 一体いつから?

マリコは記憶を辿る。
今のように捜査が忙しくなる前。
マリコが最後に土門の家を訪れたのは一週間ぐらい前だったはずだ。
ということは、その一週間の間に、土門はマリコ以外の女性と同居を始めたことになる。

マリコはこの展開についていけない。
頭が考えることを拒否しているのだ。

「榊?」

「悪いけど、土門さん一人で行って。急用を思い出したの」

「お、おい!」

マリコは土門の返事も聞かず、その場を逃げるように立ち去った。

その後で、土門と女性がどうしたのか…マリコには知る由もない。


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