中国茶寮oneでの出来事(番外編)
翌朝、二人を覚醒させたのは、ずれたタイミングで鳴り出した着信音だった。
「土門だ…」
「はい、榊です…」
二人はそれぞれ手探りで見つけたスマホを手に取る。
『え!?マリコさん?』
『……………』
一方からは蒲原のすっとんきょうな声。
もう一方からは、恐ろしく重苦しい沈黙。
こちらは恐らく日野だろう。
二人はガバっと起き上がると、慌ててスマホを交換する。
土門はすぐにマリコから離れた場所へ移動すると、何事か蒲原に釈明しているようだ。
『おはよう、マリコくん。変死体発見の連絡があってね。現場に向かってくれるかい?』
「おはようございます。わかりました」
『それと。いつも僕から連絡がいくとは限らないよ。気をつけて』
「はい、すみません……」
『宇佐見くんに迎えに行ってもらおうかと思ったけど、必要ないね?』
「はい、大丈夫…です」
『じゃあ、後で』
そこで日野の電話は切れた。
「おい。……………すまん」
何とも情けない顔の土門に、マリコは首を振る。
「お互い様よ。変死体らしいわね。急いで支度しましょう!」
「ああ」
洗面所へ向かう土門をマリコは呼び止めた。
「なんだ?」
「うん。おはよう………………」
囁く声の引力に、土門はベッドへ引き戻される。
今日も一日、土門が無事に過ごせるように。
そしてもちろん、マリコも。
ほんの一瞬。
重なるだけの口づけが、二人のお守り代わり。