探しものは何ですか?
「まいど〜!マリコさん、久しぶりね!」
「先生!おかえりなさい。学会はどうでした?」
「それがさー、もうお偉いさんの相手ばーっかりで疲れまくりよぉ!でも、ちゃーんとお土産は買ってきました。はい!」
「わーい!ありがとう♪」
マリコに差し出されたお土産の袋を、横から伸びてきた手がかっさらう。
「相変わらず素早いわね。物理担当は…」
呆れを通り越し、感心した様子の女性。
『相変わらず、元気な
くすっと自然に微笑んだ宇佐見は、はたと真顔に戻る。
――――― 相変わらず?
宇佐見は改めて来訪者の後ろ姿を見つめる。
すると、その女性…洛北医大の風丘早月は、くるりと宇佐見を振り向いた。
「宇佐見さん、聞いたわよ。大変だったんでしょう?怪我の具合はどうなの?」
「あ!先生。宇佐見さんは…」
マリコは慌てる。
早月には宇佐見の記憶のことは伝えていないのだ。
「すっかり元気になりましたよ。ご心配ありがとうございます。“風丘先生”。今お茶を入れますね」
「うん、ありがとう。宇佐見さんのお茶が楽しみで
「それは光栄です」
談笑する二人を除いた全員が、驚きに目を見開く。
宇佐見の記憶の鍵は、美人法医学者の手中にあったようだ。
「宇佐見さん、記憶が戻ったそうだな。良かったな」
「ええ」
約束通り(?)夕食を共にした二人は、そのまま土門の部屋に帰ってきていた。
「記憶を失くしていた間のことは覚えているのか?」
「うん。断片的らしいけど、覚えているって言ってたわ」
「だったら、今頃……頭を抱えてるな」
「なぜ?」
「なんて女に手を出そうとしたんだ、ってな」
「もう!またそういうこと言って。失礼ね。大体、その“なんて女”に手を出してる土門さんはどうなの?」
「ん?別に」
「?」
「宇佐美さんにとっては、“なんて女”でも。俺にとっては“最高の女”だからな、お前は」
「ま、また、そういう………」
「なんだ、照れてるのか?本当のことだぞ」
「いい加減にして。私をからかって楽しいの?」
「ああ、かなり楽しいな」
ハハハと笑う土門に、マリコはむくれる。
「もー!土門さんだっ、て……………………?」
言い返すマリコの顔が、影に覆われる。
「その続きは後で聞く。だから、…今は、もう……」
徐々に濃くなる影。
視界を奪われる前に、マリコは自ら瞳を閉じた。
「………黙れ」
そういうと、土門は“最高の女”の口を塞いだ。
fin.
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