Pseudo family
夕方。
科捜研へ珍客が現れた。
「入るぞ!」
「あ、藤倉………部長!?」
亜美の目がテンになる。
「榊はいるか?」
「あ、はい。マリコさん!マリコさーん!!」
「なあに、亜美ちゃん?」
ラボから顔をのぞかせたマリコは、パチパチと目を瞬かせ、眼の前の光景を確認する。
「まーちゃん!」
そこにいたのは藤倉と、その藤倉に手を引かれた昊だった。
「あ、あの、部長。昊くんが何かご迷惑を?」
マリコは慌て二人の方へ駆け寄る。
「いや、音無巡査に急用ができてな。ちょうど手が空いていたから、俺が連れて来ただけだ」
『大人しくしていたぞ、なあ?』などと、藤倉は手を握ったままの昊に語りかける。
「うん。これ、ぶちょーにもらったよ」
昊はマリコへクッキーの袋を見せた。
「貰いもんだ」
「ありがとうございます、部長…」
「昊、ご飯の前に食べたらダメだぞ?」
「えー」
「おやつじゃなくて、ご飯をしっかり食べないと強い男にはなれないからな!分かるか?」
「うん」
「よし!」
藤倉は昊の頭を撫でる。
「「「「「……………」」」」」
あまりにレアな光景に、しばし全員が口をぽかんと開けたまま見入っていた。
「では俺は戻るが…、榊」
「は、はい!」
マリコは慌てて返事をする。
「まだ仕事は終わらないのか?」
「いえ、今日はもう帰ります」
「そうか、それなら大丈夫だな。昊、またな?」
「ぶちょー、バイバイ」
まさか藤倉が手を振る姿を見る日が来ようとは…。
「昊くん、最強………」
亜美の呟きに、皆は深く、深く頷いた。