Pseudo family





「はい、榊です」

『あ、マリコ!私、美咲みさき。久しぶりね!』

「美咲?本当に美咲なの!?わあ、何年ぶりかしら……」

『マリコが顔を出した同窓会以来だから…、もう10年ぶりね』

「もうそんなに経つんだ。元気なの?」

『ん、元気よ。マリコは?相変わらず忙しいの?』

「そうね。本当は私が暇な方がいいんだけどね」

マリコは苦笑する。

『事件は無くならないものね、残念だけど』

「ええ。ところで今日はどうしたの?」

『あ、うん。不躾で申し訳ないんだけど、マリコに折り入って頼みがあるのよ』

「なあに?」

『私が今、京都に居るの知ってる?』

「ええ!?そうなの?……全然知らなかった」

『あ、やっぱり。そうだと思った』

彼女、山野辺やまのべ美咲はマリコの性格を熟知している。
美咲はマリコの大学の同期なのだ。
二人は学部は違ったものの、共通単位の授業で顔を合わせる機会が多かった。
もともと女子が少ない講義だったため、自然と会話をする機会が増え、いつの間にか親友に近いほどの立場になっていた。

『仕事でね、一昨年越してきたの』

「そうだったんだ…。連絡してくれればよかったのに」

『したでしょ?年賀状で』

「え!?」

『マリコはそういうこと、まったく気にしないものね』

「……………ごめん」

『いいのよ。それがマリコの良いところ?なんだから』

「そ、それで頼みっていうのは?」

『実はね……………』


美咲の話が終わっても、マリコはすぐに答えを出すことは出来なかった。

「それは私の一存では決められないわ。職場からの了承も得ないと」

『分かってる。でも、もう頼れるのはマリコだけなの。あなたに断られたら………』

「とにかく少し時間をちょうだい」

『わかった。連絡待ってるわね』

「ええ」



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