First Kiss
2月14日。
マリコはいつもとは違う思いで、土門へチョコレートを渡した。
けれど、土門は何も気づいていないようだった。
そのことに軽く落胆を覚え、その日からマリコの目に映る土門が変わった。
何故かは分からないけれど、気づけば土門を探している。
そしてその姿を目で追っていた。
でも振り向かれると、恥ずかしくて、その顔を直視できない。
名前を呼ばれるだけで、嬉しくて体温が上がる。
自分の体はどうしてしまったのか…。
『もしかして、心疾患?』
そんな風に思い悩んでいたとき、ふと若い婦警の会話を耳にしたのだ。
「ねぇ。チョコレートあげたんでしょう?その後、彼とはどうなの?」
「それが何も…。私の気持ちに気づいていないのかも」
『そうよ!土門さんも私の気持ちに気づいていないんだわ』
マリコは同調しつつ…ふと、疑問が湧いた。
『私の…気持ち?』
それはどんな気持ちだろう?という問に。
『一緒にいたいのは、なぜ…?』
そう考える過程を経て。
気づいてしまえば、答えは案外簡単だった。
『そっか…。私。土門さんが好きなんだわ』
マリコは正しい解を導き出した。
3月14日。
マリコがラボに入ると、デスクの上には綺麗にラッピングされた箱が乗っていた。
「?」
裏返してみると、“榊へ”と書かれた付箋が貼られていた。
筆跡鑑定をするまでも無く、誰の文字かマリコにはすぐわかった。
丁寧に包みを解くと、四角い缶の中にはキャンディーが入っていた。
一粒口に入れる。
甘酸っぱいその味は、ストロベリー。
マリコはその足で屋上へ向かう。
何故か待っている気がしたのだ。
扉を開けると。
「土門さん!」
その人が。