今夜くらべてみました

🍀マリコ編


「ただいまぁ」

「お疲れさん」

最近購入した焦げ茶のカフェエプロンをつけ、お玉片手に顔を見せたのは土門だ。

「いい匂いね」

「もうすぐ出来るぞ。風呂も入ってるし、どっちを先にする?」

「そうね。まずは……………」

その微妙な間に、土門の目が輝く。

所謂。

お風呂にしますか?
食事にしますか?
それとも………。

状態である。

マリコは、まるで強面の猟犬が子犬のように尻尾を振るような様子に、必死で笑いを堪えた。

そして。

「まずは、消毒ね」

土門はがっくりと肩を落とした。
その様子を横目に、マリコは丁寧に手洗いとうがいをした。

「さてと。冷めないうちにご飯をいただこうかしら?」

「おう」

ダイニングテーブルに座ったマリコの前に、美味しそうに盛り付けられた料理が並べられていく。

「白飯で…完了だ」

ぐいっ。
マリコは、ご飯茶碗を置いた土門の腕を掴むと、軽く引っ張った。

「なんだ?」

腰を折り、土門は身をかがめる。

「いただきます」

そういうと、マリコが一番初めに口をつけたのは土門の頬だった。

もちろん。
「召し上がれ」の相槌が、マリコの唇に返されたことは言うまでもない。



「いつも美味しいわね〜」

「そうか?レシピ通りに作っただけだぞ。お前にもできる」

「無理よー。私は土門さんみたいに上手にできないわ」

「………………榊」

「なに?」

「おだてて明日も作らせようとしても無駄だぞ。明日はお前が夕食当番だろう」

「うっ………だってぇ」

「練習しなけりゃ、上手くなんてならんさ」

「………………」

明らかに、しょんぼりと箸が止まってしまったマリコに、土門の仏心がついつい顔を出す。

「俺も手伝ってやる」

「ほんとう?」

ぱぁっと華やぐ顔に、「俺も甘いな…」と分かっていながら、土門の鼻の下は伸びるのだった。


*****


翌日。

「ねえ、土門さん。イチョウ切りってこう?」

「いや、こうだ」

「え?こうでしょ??」

「だから、こうだ………って、貸してみろ」

と、結局ほとんど作らされる土門なのであった。

「う〜ん、おいしい♡」


『まぁ、いいか?かわいいしな』



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