檸檬爆弾





無機質な白い部屋で、僕はただ息だけをして、時が過ぎゆくのを待っている。

何もしない。
何もできない。
果たしてそれで生きていると、言えるのだろうか。

僕は窓辺に目を向ける。
そこには色鮮やかな黄色い球体。
爽やかな香りと、瑞々しい風を運んでくるいびつな球体。

僕はお気に入りの本の一節を思い出した。
『もし、この檸檬が…』
そう考えたら、何だかワクワクしてきた。
こんな馬鹿げた計画でも、僕には大きな意味がある。
生きている、その実感を得られるかもしれないのだ。

“運命”なんてまっぴらごめんだ。
たった一つしかない、自分の命だ。
だから自分で決める。
残されたこの命の使い道は。



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