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その後すぐ、翼は大きな裁判に関わることとなった。
大規模詐欺グループの被害者側の弁護団の一員として、数年に渡り百以上に及ぶ訴訟を担当してきた。


「先生、今日の郵便物です」

事務員が翼のデスクへ封書の束を置いていく。
多くは訴訟に関するものばかりだ。
確認していた翼の手が一瞬止まった。

それは、一枚の葉書。

住所変更を知らせる文面の上には、並んだ男女が写っていた。
片側の女性は、陽だまりのような温かい笑顔をこちらに向けている。
そしてもう一つ、翼は気づいた。
女性のお腹が、心なしかふっくらとしているのは間違いないだろう。
なぜなら、翼はこの女性の華奢な体つきを忘れてはいない。

自然と笑みを零しつつ、翼は葉書を裏返す。

その差出人は ――――― 。

―――――『土門マリコ』。




fin…?




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