偽り





一日の仕事を終え、帰宅したマリコが郵便ポストを開けると、一通の封筒がひらりと落ちた。

「あら?」

宛名にはマリコの名前のみで住所は書かれておらず、切手も貼られていない。
ということは、ポストに直接投函されたものということになる。
裏返してみると。
やはり、差出人の名前は無かった。

マリコは封筒をハンカチで包むと、部屋へ向かった。




手袋を装着した手で、封筒を明かりに翳してみる。
怪しい影は移ってはいない。
マリコは慎重に封を開いた。

中には紙と写真が一枚。
まずは三つ折りにされた手紙らしきものを開く。


『榊マリコ

土門と別れろ。
さもなくば、土門の命はない。』


印字されていたのは、シンプルな脅迫文。
そして写真には、土門とマリコが並んでこのマンションへと入って行く後ろ姿が写っていた。

「いたずら?」

手紙を前に悩むマリコだったが、いかんせん情報が少なすぎる。
しばらく様子をみようと、この日はすぐにベッドへと潜り込んだ。
連日深夜までの鑑定続きで、疲れきっていたマリコは泥のように眠りに落ちた。



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