新・チャレンジ企画





今年は例年にないほどの猛暑で、毎日茹だるような暑さが続いている。
クーラーの効いた部屋でさえ……暑い。

「くそ、こう暑いとイライラするな。エアコンの温度、下げていいか?」

「ええ?私は今でも寒いくらいよ?」

むむっと土門は閉口する。
マリコに風邪を引かせるのは本意ではない。
もっとも、看病は楽しそうだが。

「じゃあ、アイスでも食べない?」

「おっ!いいな」

マリコは冷凍庫から、棒アイスを2本持ってくる。

「はい」

「おう」

ピリッと袋を破る。
口にくわえれば、冷たい甘さが一瞬気分をクールダウンしてくれる。
しかし。

「すぐに溶けちゃうわね!」

マリコは溶け出すミルクアイスを溢さないように舐めとり、啜り上げる。
その唇には薄い乳白色の膜が張り、濡れて艶めいている。

「……………」

土門は無言でマリコの腰に腕を回す。

「土門さん?」

「ここ」

土門はマリコの唇をプニッとつつく。

「いやらしいな……」

細めた目がマリコを捕らえる。

「え?ええ!?ち、ちょっと待って……」

「早く食え」

「そんなこと言ったって…あっ!零れちゃう……」

ぺろり。
ちゅ、ちゅぅぅぅ。


――――― わざとではない。

決してマリコは土門を煽っているわけではないのだ。

エアコンの効いた室内でもアイスは溶けていく。
そして床を汚さないために、マリコは滴るアイスを必死に舐めてとっているだけなのだ。

だが、しかーし!


「………………貸せ!」

土門はマリコからアイスを奪い取ると、半分ほど残っていたものを無理矢理口に入れる。
しばらくもごもごしていたが、すぐにアイスは溶けてなくなる。

「ああ~。美味しいから食べたかったのに……」

マリコは恨めしそうに、後に残されたアイスの棒を眺めている。

「だったら、別のモノを食べればいいだろう?」

「?」

「俺ならいつでも大歓迎だぞ!」

「???」

マリコはまるで意味が分からず、首をかしげるばかりだ。

すると、土門は視線を下げる。
マリコもつられる。

そして。

「…………ばかぁっ!」



その後、マリコは冷たくないミルクアイスを食べたとか、食べないとか。
真相は?

……秘密、だそうでーす(* ̄∇ ̄*)




fin.



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