新・チャレンジ企画
ある時は、爆発を逃れるとき。
「榊、時間がない!」
カチカチとタイムリミットの迫る音が響く。
「急げ!!」
土門はマリコの手を握ると、強く引き走りだす。
「土門さん!」
マリコは必死に土門の背中を追いかける。
固く握られた手は決して緩まない。
またある時は、人混みのなかで。
「土門さん、どこ?」
マリコの声は不安気だ。
「榊、ここだ」
「え?」
マリコの手がぐいっと引かれる。
「土門さん!良かった…離れ離れになったかと思ったわ」
「それにしても、すごい人混みだな。はぐれたらやっかいだ…」
そういう理由をつけて、二人は手を繋ぐ。
背後では、大輪の花火が夜空を彩っていた。
そして、またある時は……。
夕立に雨宿りを余儀なくされた二人は、人気のない路地裏の庇で雨が通りすぎるのを待っていた。
互いにハンカチで服についた水滴を拭き取る。
ふいに二人の肘がぶつかった。
土門は無言でその腕をひき、雨に濡れたマリコの手を握った。
少し、ひんやりとしている。
その手のひらの冷たさとは対照的に、マリコの顔は沸騰寸前の熱さだった。
その様子に土門も気恥ずかしさを感じてしまった。
手なんて、これまで何度も繋いできたのに。
今は……目も合わせられない。
だけど。
その手が離れることはなかった。
雨が止んでも。
fin.