『父になる』ということ。『母になる』ということ。
そして4日目の朝。
またしても土門は何かの振動で目覚めた。
昨夜もマリコのベッド際で手を握ったまま眠ってしまったらしい。
電話だろうか?、とスマホを見るが着信はない。
すると、ぐいっと手が引かれた。
「マリコ、起きたのか?」
マリコはひどく驚いた顔をして土門の手をさらに引っ張り、自分のお腹の上にのせた。
“ポコッ!”
「!?」
土門は目を瞠る。
“ポコッ!”
「もう、そんなに蹴ったら痛いわ……」
なだめるように、マリコはお腹をさする。
土門もマリコの手に、自分のそれを重ねた。
“ポコン……”
これまでより振動が小さくなったのは……マリコの声が聞こえたからだろうか?
「うん、いい子、いい子ね……」
涙ぐみながら、嬉しそうに微笑むマリコ。
土門はそんなマリコの表情を久々に目にした。
「マリコ……」
土門はマリコを抱き寄せた。
今、土門の腕の中には、何よりも…何よりも大切な宝物が2つもある。
自分はなんと贅沢で幸せな男だろう。
土門はしばらくそうして、重なりあう鼓動に耳を済ますのだった。