『父になる』ということ。『母になる』ということ。





そんな翌日。
マリコは定期検診に洛北医大を受診した。
早月と別れロータリーでタクシーを待っていると、小さな男の子が歩道と車道の境目にある段差を平均台を渡るように両手を広げて歩いていた。

ぐらぐらと危なっかしい足取りに、マリコは気が気ではない。
しかし母親らしき女性は、まだ院内の会計窓口にいるようだった。

男の子はマリコの目の前を通りすぎ……………その体がぐらりと傾いだ。
そして運悪く、同じタイミングでタクシーがロータリーへ入ってきたのだ。

「あ!」

マリコはとっさに駆け出そうとして、ほんの一瞬。

……躊躇ためらった。

今、飛び出したらお腹の子は……?

それでもマリコは、目の前で傷つくかもしれない命を放っておくことは出来なかった。

「危ないっ!!!」

マリコは道路へ飛び出し、できる限り手を伸ばした。
目の前に迫るタクシーに、恐怖心が沸き上がる。
でも、今この瞬間。
目の前の男の子を助けられるのは、自分しかいない。
マリコはもう自分のことも、子どものことも頭から消えていた。
ただ、小さな命を守りたい……。

男の子の体を抱え込み……そのまま、マリコの意識は途絶えた。



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