『父になる』ということ。『母になる』ということ。
それからしばらくの間、悪阻に悩まされることになったマリコだったが、母が送ってくれた食材に助けられ、何とか辛い時期を乗り越えた。
ひと月、またひと月と時は過ぎ、8ヶ月を迎える頃には随分とお腹も大きくなっていた。
この頃、ひょっこりと美貴が二人の前に顔を見せた。
「マリコさんに」
そういって美貴が手渡したのは、安産祈願で有名なお寺のお守りだった。
「美貴ちゃん、ありがとう」
「マリコさん。……お腹、触ってみてもいいですか?」
「ええ、もちろん!」
美貴が恐る恐る触れると、大きくせりだしたお腹は温かく……美貴はそれだけでとても幸せで、優しい気持ちになった。
「もう2ヶ月もすれば、逢えますね。どんな子だろう……マリコさん似だといいけど」
「おいっ!💢」
「だって本当のことじゃない。女の子なら間違いなく美人だし、男の子ならイケメンになるに決まってるもん」
「性格までこいつと一緒だったらどうするんだ?俺は命がいくつあっても足りんぞ!」
「ちょっと、薫さん?💢💢💢」
ピクピクとマリコの米神が痙攣する。
「マ、マリコ!いや、そういう意味じゃなくてだな……」
「じゃあ、どういう意味!?」
「あらららら~」
詰め寄られ後ずさる兄の姿に、土門家の力関係を正しく理解した美貴であった。