『父になる』ということ。『母になる』ということ。





「風丘先生。今、お時間ありますか?」

病院内で、早月は内科医に声をかけられた。

「はい?」

「あの、榊さんのことで……」

『ああ…』と、早月は思い出した。
娘の怪我で早退した日に、マリコが来院したことがあった。
健康診断で貧血の再検査になったからだ。
早月が担当する約束をしていたのだが、そんな理由で目の前の内科医に事情を説明し、彼に検査を変わってもらったのだ。

「マリコさんに何か?」

「いえ。あの……。結果を見ていただくのが早いかと」

そういうと、内科医は早月に検査結果を手渡した。

視線を落とし、早月はざっと数値を確認していく。

「え?これ!!」

早月は思わず顔を上げ、内科医を凝視した。

「どうしますか?僕から伝えていいですか?」

「待って!マリコさんの来院予定はいつですか?」

「明後日です」

「わかりました。これは私が預かります。マリコさんへも私が責任をもって伝えます。それでもいいですか?」

「もちろんです。その方が榊さんも安心されるでしょう」

「ありがとうございます!」

去っていく内科医を見送ると、早月は速攻で電話をかけ始めた。

「……もしもし、土門さん?」




1/20ページ
スキ