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「榊、支度は出来たか?」
「ええ、戸締まりもOKよ」

マリコは慌ててバンプスを履く。

「よし。じゃあ、行くか?」

ここを出れば、また犯罪と向き合う一日が始まる。
土門はドアノブに手をかけた。

「あ、待って!」
「なんだ?忘れ物か?」
「ええ。これ…」

つんと袖口を引っぱられ、振り返った土門は…。

ちゅっ。

マリコに唇をピッタリと塞がれる。

「「……………」」

そのまま、1分。
キスは続いた。
 
「あ、ついちゃったわ…」

唇を解くと、マリコのルージュが土門へと移っていた。
それに気づいたマリコは、指で土門の唇をたどる。
ルージュを取り去ると離れていくその手を、土門は捕まえた。

「土門さん?」
「朝から煽ってくれる…」
「そんなつもり…………んっ!」


隣人もこの時間に出勤なのだろう。
玄関の扉の開く音がする。
続いてパタンと閉まり、ガチャリと施錠する。
そして、響く足音は少しずつ遠ざかっていった。

その間、土門はマリコを拘束したままキスを堪能する。
もはやマリコの唇からルージュは消え落ちていた。

「つけ直さなきゃ。でもこれなら4キロカロリーくらいかしら?」
「カロリー?」
「ええ、そうよ。土門さん、最近ちょっと……」

チラリと、マリコの視線が土門の腹囲をさまよう。

「キスはね、1分あたり2キロカロリー程度消費するそうよ。だから塵も積もれば………って土門さん!?」

再び1分のキスの後。

「だったら今夜は更なるカロリー消費に協力してくれ」

するりとヒップを撫でられる。
真っ赤な顔のマリコは、お返しに土門のお腹の肉を摘んだ。

ムニッ。

「…………………………」
「な、なんだ?俺だって気にしてるんだ」

ムニ、ムニッ。

「榊?」
「…………か」
「か?」
「カワイイ!」
「……………」

この二人、一体いつになったら出勤できるのだろうか?


(こっそり)
管「送信ありがとうございました!(≧∇≦)管理人の頑張る源です。ぜひまたお越しください(^^)」


≪omake💕≫


「もう!私ばっかりっ…カロリー消費してる…んぅっ!……じゃないの!」

サイドボードの小さな明かりに照らされ、壁にぼんやり浮かぶ影は、まるで帆を閉じたディンギーのようだった。

海原を漂うようにベッドに横たわる船影。
その上では細くしなやかなマストが、大きく、小さくそり返る。

「仕方ないだろう?お前は上の方が悦ぶんだから」

船が動くたび、マストは快楽の色を滲ませて軋む声をあげ、まるで風に煽られるように揺れ続ける。

「そんな、ことぉ…あぁ……んっ!いじわる……」

船体から伸びた手が、マストを手折たおる。
ぐらり、とかしいだマストの影は船体にピタリと重なった。

『だったら、今夜は…』、その言葉通り、夜明けまでディンギーは漂流を続けた。
満潮と引潮の間を何度も、何度も。

翌朝、船の腹で目覚めたマストは、心地よさに“うっとり”と微睡む。

「少しぐらい“ぷにぷに”している方が気持ちいいわね」

その声が聞こえたのか、船体の手が再びマストに伸びていく。

どうやら…。
今日もまた、出航時刻は遅れそうだ。


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