thanks!《2》

スキ!を送りました
(コメントの返信は『Re:』ページをご覧ください)


深夜の科捜研。
ほとんどの部屋の電気は消え、唯一煌々と明るいのはマリコの研究室だけだ。

新しい年が明け、世間は未だ正月気分が抜けきれてはいないようだが、犯罪に正月は関係ないらしい。
仕事始めの日から、窃盗に暴行、大小かかわらず事件は起きている。
当然、マリコの元へは鑑定依頼が切れることなく舞い込んでいた。

鑑定に没頭していたマリコだったが、作業机の微妙な揺れに気づき、顕微鏡から顔を上げた。

「もしもし?」

『榊か?今、どこだ?』

「科捜研よ」

『まだ仕事してるのか…』

土門の声は呆れているようだ。

「だって、誰かさんから大量の鑑定依頼が届いたんだもの」

『…………………』

マリコの皮肉に相手は苦笑しているのだろうか。
ふっという息遣いだけが、マリコの耳に届いた。

『わかった。詫びの代わりに、今から差し入れを持っていく』

「本当?お昼から何も食べてないの。待ってるわ」

もう一度呆れたようなため息が聞こえ、通話は切れた。



「入るぞ。ほら、差し入れだ」

「ありがとう、土門さん。…わぁ、ほかほか!」

マリコが感嘆の声を上げる。
コンビニの袋の中身は中華まんだった。

「適当に見繕ってきた。好きなやつを食え」

マリコはピザまんを取り出すと、はむっとかぶりつく。

「旨いか?」

「ええ…はふっ。ふか、ふか…だ、はふっ、わ」

熱を逃しながら答えるマリコの様子が可笑しくて、土門は笑う。

マリコが持っている中華まんを見て、ふと思った。
そういえば、最後にこの中華まんのように白くて柔らかくて、温かいものに触れたのはいつだったろうか?と。

指折り数え、存外間が空いていたことに気づいた土門は、マリコの向かいの椅子に腰を下ろした。

「俺も最近、“中華まん”はご無沙汰だな」

「だったら食べる?」と言いかけて、マリコは土門の怪しい視線を感じた。

「!?」

危機を察し、慌てて立ち上がったマリコだったが、伸びてきた二本の腕に捕まった。

「土門さん!ここ……」

「分かってる。少しだけ、充電させてくれ」

土門はマリコの腰を抱き寄せると、胸に顔を埋めた。
そして目を閉じる。
マリコの鼓動のリズムが心地良い。

「土門さん?」

もうしばらくは、二人でゆっくり過ごす時間は持てないだろう。
だったらせめて今だけは…。
じっと動かない土門の頭を、マリコはそっと抱きしめた。

しかし…。

“ぐー”

「「!?」」

「残りもしっかり食っておけよ…くくっ」

笑いの止まらない土門は、真っ赤な顔のマリコにコンビニ袋を押し付ける。

「お前はもう少し太ったほうが抱き心地がいいぞ?」

「余計なお世話です!」

マリコは次なる中華まん…肉まんをパクリとくわえた。


(こっそり)
管「送信ありがとうございました!(≧∇≦)管理人の頑張る源です。ぜひまたお越しください(^^)」


16/28ページ
スキ