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「土門さん、待った?」

夕暮れ少し前、屋上に現れたマリコに土門は絶句し、次いで眉をひそめた。

「いや…」

「はい、鑑定書。できたてホヤホヤよ」

「ああ」

上の空の返事をすると、土門はベンチに腰かけ書類に目を通す…つもりが視線は別のところに集中する。

「鑑定の結果…………………………土門さん、聞いてる?」

「……榊」

「なに?」

「なんでそんな格好してるんだ?」

そんな格好。
腰かけた土門の目線の先には、マリコの足がある。
いつもならダークな色調の布地だが、きょうは違う。
艶めいたヌードカラーのストッキングに包まれた“足”なのだ。
少し上を見れば、まず白衣の裾が目に映る。
ということは、マリコは白衣の丈よりも短いものを着用しているということだ。

それは……。

ひらり。
土門は白衣の裾を持ち上げた。

「ちょっと!」

ピッタリとしたシルエットのスカートの色はシンプルな黒。
だがそれは、かえってマリコの足を際立たせる。

「えっち!」

「白衣を捲っただけだろう。で、なんで今日に限ってミニスカートなんだ?」

シワのよった眉間と、綻びそうな口元のアンバランスさが、土門の複雑な気持ちを表している。

「今日は『ミニスカートの日』なんですって」

「18日がか?」

「ええ。風丘先生が教えてくれたの。それで亜美ちゃんと3人でミニスカートを着てみよう、って話になったの」

それでか……。
土門は今朝のそわそわした様子の蒲原と、昼過ぎに「茶器を割ってしまった」と赤い顔で片付けている宇佐見を思い出した。

しかし、ということは。
マリコは今朝からこの姿だったということだ。

「おい、榊。お前、今日はもう帰れ」

「どうして?」

てっきりスカートの感想を聞けると思っていたマリコは、土門の言葉に驚き、その顔に落胆の色を滲ませる。

「いいから。帰れ!」

「……………」

無言で目を背けるマリコに、土門はやれやれと手を伸ばした。
腰を抱き寄せれば、やっと土門を見る。

「多分、お前の予想とは逆の理由からだ」

「?」

「似合いすぎてるからな。他の男に見られるのは気に食わん」

みるみるマリコの顔は赤くなる。

「それに」

土門はするりとマリコの膝裏から上に手を滑らせる。

「土門さん!」

「こういう誘惑にも負けそうだ」

土門は惜しみながらもマリコを手放す。
そして、『はぁ…』としばらく続く不埒な輩の後始末に頭を悩ませる。

「働き蜂は一匹で十分だ」

目の前の女王蜂に、その言葉の意味は伝わってはいないだろうが。


(こっそり)
管「送信ありがとうございました!(≧∇≦)管理人の頑張る源です。ぜひまたお越しください(^^)」


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