thanks!《2》
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*****
夏祭りの夜、マリコは土門と待ち合わせをしていた。
しかし土門は仕事の区切りがつかないのか……約束の時間を遅れている。
「せっかく浴衣を着て来たのに……」
ため息をつくと、まとめ髪に刺したかんざしのかな細工が揺れる。
「おねーさん、一人?」
なんて声をかける不届き者はもう幾人目か……。
マリコはうんざりした。
「悪いな。連れがいる」
マリコの背後から声がした。
振り返ると、土門が立っていた。
「ちっ!」と男は舌打ちすると、憎らしげに土門を睨み付け、その場を立ち去った。
「土門さん、遅いわ!」
「すまん……」
「仕事、そんなに忙しかったの?」
「いや……」
土門は言葉を濁す。
「……実は、これを探していた」
土門はマリコに紙袋を差し出した。
マリコが上目遣いで中身を尋ねると、開けてみろ、と土門は苦笑する。
ガサガサと袋から中身を取り出すと。
それは、菖蒲の絵柄が雅な和紙の団扇だった。
「まあ、きれい……」
「今日の浴衣に似合うか?」
マリコは扇ぐ仕草のポーズをつけて、「どう?」と土門にたずねる。
しかし土門は答えず、ただ笑っている。
「それで機嫌を直してくれるか?」
「そうね……。りんご飴もつけてくれたら!」
マリコはするりと土門に腕を絡める。
しゃらりと揺れるかんざしが涼やかだ。
「榊、団扇は無くさずに持っていろよ?」
「え?ええ……」
念を押す土門に、マリコは首を傾げつつ頷いた。
「あ、あったわ!りんご飴」
軽やかに下駄の音を響かせ、マリコは足早に土門を引っ張る。
今夜のマリコは少女のようなあどけなさと、妖艶な女性の魅力が混じりあっている。
そんな稀有で美しい華を、男どもが放っておくはずがない。
だから、土門はマリコへ団扇を送った。
団扇とは、古来より病魔などを打ち払う魔除けとして用いられてきたのだ。
だったら……。
マリコに群がる悪漢も打ち払ってくれるだろう。
「早く、土門さん!」
自分の腕を引くマリコに追い付くと、土門はマリコの耳元に口を寄せた。
「浴衣、よく似合っているぞ」
今年のりんご飴は例年よりも赤く、そして甘いらしい。
*****
(こっそり)
管「送信ありがとうございました!(≧∇≦)管理人の頑張る源です。ぜひまたお越しください(^^)」
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夏祭りの夜、マリコは土門と待ち合わせをしていた。
しかし土門は仕事の区切りがつかないのか……約束の時間を遅れている。
「せっかく浴衣を着て来たのに……」
ため息をつくと、まとめ髪に刺したかんざしのかな細工が揺れる。
「おねーさん、一人?」
なんて声をかける不届き者はもう幾人目か……。
マリコはうんざりした。
「悪いな。連れがいる」
マリコの背後から声がした。
振り返ると、土門が立っていた。
「ちっ!」と男は舌打ちすると、憎らしげに土門を睨み付け、その場を立ち去った。
「土門さん、遅いわ!」
「すまん……」
「仕事、そんなに忙しかったの?」
「いや……」
土門は言葉を濁す。
「……実は、これを探していた」
土門はマリコに紙袋を差し出した。
マリコが上目遣いで中身を尋ねると、開けてみろ、と土門は苦笑する。
ガサガサと袋から中身を取り出すと。
それは、菖蒲の絵柄が雅な和紙の団扇だった。
「まあ、きれい……」
「今日の浴衣に似合うか?」
マリコは扇ぐ仕草のポーズをつけて、「どう?」と土門にたずねる。
しかし土門は答えず、ただ笑っている。
「それで機嫌を直してくれるか?」
「そうね……。りんご飴もつけてくれたら!」
マリコはするりと土門に腕を絡める。
しゃらりと揺れるかんざしが涼やかだ。
「榊、団扇は無くさずに持っていろよ?」
「え?ええ……」
念を押す土門に、マリコは首を傾げつつ頷いた。
「あ、あったわ!りんご飴」
軽やかに下駄の音を響かせ、マリコは足早に土門を引っ張る。
今夜のマリコは少女のようなあどけなさと、妖艶な女性の魅力が混じりあっている。
そんな稀有で美しい華を、男どもが放っておくはずがない。
だから、土門はマリコへ団扇を送った。
団扇とは、古来より病魔などを打ち払う魔除けとして用いられてきたのだ。
だったら……。
マリコに群がる悪漢も打ち払ってくれるだろう。
「早く、土門さん!」
自分の腕を引くマリコに追い付くと、土門はマリコの耳元に口を寄せた。
「浴衣、よく似合っているぞ」
今年のりんご飴は例年よりも赤く、そして甘いらしい。
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(こっそり)
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