一級葬祭デレクターの受難
翌日、被害者が通っていた高校の体育館には関係者が揃っていた。
警察からは、土門、蒲原と、狩矢、橋口。そしてマリコ。
今回は特別に明子も同席していた。
関係者からは、母親とマネージャーの宗像歩。そしてチームメイトたちが集まっていた。
「結論から言うと、嶋蓮司さんは事故死ではなく殺人です」
マリコは一歩踏み出し、声を張り上げた。
「そんな!……本当ですか!?」
母親の膝がガクリと折れる。
隣の歩が慌てて支えた。
「はい。解剖の結果、試合中の怪我より前に負った外傷により、蓮司さんは急性硬膜下血腫を発症していました。そのため、頭痛を訴えていたものと思われます。そして一時間後、脳内の出血過多により蓮司さんは意識が朦朧となってしまった。そして足元が覚束なくなったことが原因で、試合中の衝突事故が起きたものと考えられます。もちろん、試合中の画像を解析した結果からもそれが見て取れました」
マリコは手元のタブレットに、試合の動画を再生する。
確かに、相手選手にぶつかる直前に被害者の足元はふらつき、手で頭を押さえる仕草が映っていた。
「そして、本当の致命傷となった傷口には、複数人の汗の成分が検出されました。揉み合った際か、傷口を確かめようとした時にでも付着したのでしょう。先日採取をご協力いただいたDNAから検証した結果、このチームメイトの中の三名だと判明しました……」
マリコはチームメイトをぐるりと見渡し、ある一点に視線を向けた。
「
マリコに名前を呼ばれた男達は、自然と一歩後ずさる。
「あ!そうです。彼と、彼と……彼です!確かに私はあのお通夜の時に彼らが話していたのを聞きました」
明子が三人を指差し、明言する。
「くそっ!余計なこと言いやがって!!」
明子に名指しされた一人の学生、興津がポケットからカッターを取り出し、明子目がけて走りよる。
「石原さん!!!」
「榊!?」
「橋口!」
とっさにマリコは明子を背に庇う。
同時に飛び出した土門が、男のナイフを弾き、続いて橋口が体当たりを食らわせ、男を這いつくばらせた。
「観念しろ!」
土門の一喝に、足元の興津だけでなく、残りの二人も地面に崩れ落ちた。
「一体、何があった?」
狩矢警部の落ち着き払った問いかけに、崩れ落ちた眞島が答えた。
「あいつばかり良い思いをするからだろ!試合ではいつもレギュラー、おまけに、今度はマネージャーと付き合うとかぬかしやがって!頭に来たからあいつを部室に呼び出したんだ。そのうち俺らと揉み合いになって……気付いたら、あいつが勝手に棚に頭をぶつけて……」
「橋口、連れていけ!」
あまりに身勝手で幼稚な動機に、狩矢は『もう聞きかねる』といったように橋口に命じた。
そんな理不尽な理由でたった一人の息子を亡くした母親は泣き崩れ、恋人を失った歩もただ呆然と立ち尽くしていた…………。
蒲原が二人を気遣うように寄り添い、覆面へと誘導して行った。