『密着!どもマリ24時』(エイプリルフール編)

in filming location




「ここで車を降りていただいて、台詞はですね……」

撮影スタッフが、台本を手に土門へ説明する。
昼をまたいで土門は奥野と二人、リハーサルを続けていた。

『ブランク、現場は?』

「ブランク?」

「ああ、それは私のあだ名です。一課長に命名してもらいました。だから、土門さんもそう呼んでください」

「わかりました」

「で、最後は、捜査員たちの士気を高める台詞です」

『被害者の無念を晴らす。
そして、必ずホシを挙げる!』

「これでお願いします」

スタッフが説明を終え、土門に頭を下げる。

「はぁ……」

段々と土門は気が重くなってきた。
しかし、この試練を乗り越えなければ、マリコには会えない。

「では、お願いしまーす!」

開始の掛け声に、皆が準備に取りかかった。



「では!よーい………」




現場に一台の車が到着した。
ブランクがドアを開ける。

「お疲れさまです」

カツン!とアスファルトを鳴らし、降り立ったのは……。

「ブランク、現場は?」

「あちら……」

(不味い…… byブランク)

ブランクの視線がある一点に集中する。

「現場はどこだ、向こうか?」

土門は台本通りに台詞を進める。

「あの、これ……」

ブランクが小声で土門のネクタイを指差した。

――――― 今日の土門は、いつも通りの“赤いネクタイ”。

土門もようやく自分のやらかしに気づいた。

(どうします? by土門)
(どうしましょう? byブランク)

二人は背中を流れる冷や汗を感じながら、アイコンタクトを交わす。
だが、今さらどうにもならない。

まさにそのとき、府警から支給されている土門のガラケーが鳴った。




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