チャレンジ企画
聞き込みの帰り道、土門とマリコは運悪く雨に降られてしまった。
「どこかで雨宿りをしていくか?」
そうたずねる土門に、マリコは首を振る。
「小雨だもの、平気よ!」
マリコは小走りで駅へと向かう。
土門も慌てて続いた。
「小雨とはいえ、たいぶ濡れたな。大丈夫か?」
「大丈夫よ!気持ちいいくらいだわ」
そういって、マリコはまるでいたずらっ子のように笑う。
その長い睫毛には小さな雨粒がついていた。
土門はその水滴を拭おうとして、手を止めた。
うっすらと雲の隙間から顔を出した太陽が、マリコの顔を照らしたのだ。
すると。
その睫毛はまるで宝石のように、きらきらと輝く。
それは、なんて……。
「ふーん。それがお兄ちゃんがマリコさんを意識した瞬間なんだ?」
「な、何でそうなるんだ?」
「だってー。そのとき思ったんでしょ?」
「な、何を?」
「マリコさんは、なんて……キレイなんだって!」
兄をちらりと見上げ、フフフと美貴は笑う。
「分からなくないけどねー。女の私から見ても、マリコさんはキレイだもん。よくお兄ちゃんを選んでくれたよねぇ?」
「余計なお世話だ!」
『大体、あいつの方が俺にぞっこんで…ゴニョゴニョ』と、何やら土門はひとりごちる。
「まあまあ、どっちがぞっこんだっていいじゃん。どうせ夫婦になるんだし……」
美貴は壁の時計に目をやる。
「お兄ちゃん、そろそろ時間じゃない?」
「ん?ああ、そうだな」
「きっと、すっごくキレイだよね……。一番に見られるなんて…お兄ちゃん、役得だね!」
「当たり前だろ!“俺の”なんだからな!!」
耳をほんのり染め、白いタキシード姿の土門は部屋を出た。
これから迎えに行くのだ。
白いドレスに身を包んだ彼女を。
きっと誰よりも愛らしく、美しいに違いない、その人。
その人の名は。
今日からは『土門マリコ』。
fin.