チャレンジ企画
キッチンから勢いよく水の流れる音、食器の重なる音が聞こえる。
マリコが食事の後片付けをしているのだ。
料理の苦手なマリコだが、片付けは得意なようだ。
手際よく洗い物、片付けをこなし、いつもキッチンはキレイに保たれている。
聞きなれた音は土門の耳を通り抜けていく。
いや。
むしろザザーと流れる水音が、土門には子守唄となった。
濡れた手を拭いたマリコがソファをのぞくと、土門は眠っていた。
腕組みをしたまま、難しい顔をしてうたた寝している土門が可笑しくて、マリコは小さく吹き出す。
このままでは風邪を引いてしまうだろう。
マリコは手近にあったブランケットを土門にかけた。
ずり落ちないように、肩の辺りをくるむ。
思わぬ近さに土門の寝息を感じて、マリコは土門の顔をまじまじと観察する。
うっすら髭の残る頬。
さっきまで引き結ばれていた口は、今は薄く開いている。
むにっ。
マリコが軽く頬を引っ張っても、土門は反応しない。
刑事だというのに。
マリコと一緒のときは、警戒心がゼロになるらしい。
こんな無防備な土門はレアだ。
マリコはうずうずする。
イタズラしちゃおうかしら……。
マリコは土門の耳元で囁いてみる。
「土門さん、起きてるの?」
「…………」
答えはない。
それなら……。
マリコは、いつも土門が自分にするように、真似してみることにした。
マリコの唇が額に触れ、鼻先を掠め、頬に止まる。
それでも土門は眠ったままだ。
おやすみなさい、そう囁いてマリコは土門から離れる。
「?」
ところが。
体が動かない。
見れば、自分の腰に土門の腕が絡み付いていた。
「まだ一つ、残ってるだろう?」
「土門さん!?起きてたの?」
「イタズラするなら、最後まできっちりやれ。こんな風に……」
「あっ……」
最後はぴったりと重なりあって。
マリコの声も息も、土門に奪われる。
さらにその先まで…土門はどんどんエスカレートしていく。
さすがに、やりすぎではないだろうか……?
「イタズラは、そういうもんだろう?(ニヤリ)」
fin.