チャレンジ企画
「おい、榊」
「なあに?」
「これはいったい……どういうことだ!?」
土門は壁に張られた紙をバンっ!と叩く。
そこに書かれていたのは……。
《水やり当番表》
さて、ことの発端を説明しよう。
二人は以前、ぬか漬け絡みの事件に遭遇したことがある。
その際、マリコはぬか床の素晴らしい効能に目覚め、自身でもぬか床を購入し、ぬか漬けを始めた……のだが。
それならいっそのこと、漬ける野菜も手作りしてみようと考えたのだ。
そこで選んだのは『ミニトマト』。
比較的栽培しやすく、ぬか漬けにしても予想外に美味しいのだ。
ただ問題があるとすれば……。
それは、土門がトマトを苦手だということだ。
マリコはそれもわかった上で、ミニトマトを選んだ。
ぬか漬けにすれば食べられるかもしれない。
それに、自分で育てたものなら尚更だ。
そんなことから、マリコの作成した『水やり当番表』の平日は、すべて土門の名前がはまっていたのだ。
「なんでお前が2日で、俺が5日なんだ?不公平にもほどがある!」
「でも……」
「なんだ?」
「自分で手をかければ、土門さんもミニトマトが食べられるようになるかもしれないわ」
それに…、とマリコは続ける。
「土門さんの育てたミニトマト…ぬか漬けにして食べてみたいの。ダメ?」
上目使いでお願いされ、土門は言葉に詰まる。
その顔は狡い。
「……お前が食べさせてくれるのか?」
「え?」
「だから、その……。『あ』、『あ』…」
「『あーん』ね!してあげる。薫くん♡」
明らかにからかわれているはずなのだが。
……ちょっと赤面してしまう土門であった。
fin.