チャレンジ企画





「おい、大丈夫か?」

「なにがー?」

「酔っぱらいが!飲みすぎだ!!」

「だってぇ……あっ!」

「榊!」

躓きそうになるマリコを、間一髪、土門が支える。

「ほら、エレベーターが来たぞ」

「ん……」

ふらつくマリコを支えて、二人はエレベーターに乗り込む。
深夜のためか、四角い箱の中には二人だけ。

「どもん…さ、ん………」

色っぽい声で名前を呼ばれ、土門の眉がピクリと動く。

相手は酔っぱらいだと分かっているが……。
酔っているのは、マリコのせいで、自分の責任ではない。

それなら……。

土門はアルコールで火照ったマリコの顎を上向かせ、口づけた。
啄むようなそれは、だんだんと深みを増していく。

「…ん、っく……ふぁ」

鼻に抜けたような声をマリコが漏らしたとき……。


――――― ガタン!
――――― ヒューーーン!


衝撃と、停電が二人を襲った。

「なんだ!?」

「な、なに!?」

二人は慌てて離れる。
マリコの酔いもすっかり醒めたようだ。

「止まっちまったみたいだな」

「電気系統のトラブルかしら……」

隙間から差し込む光はあるものの、互いの姿はぼんやりと輪郭程度にしか判別できない。

「ああ。仕方ない。暫く大人しくしているしかないな」

そういうわりに、土門の腕はマリコの腰を引き寄せる。

「ち、ちょっと……」

「なんだ?はじめに誘ってきたのはお前だぞ?」

「酔って覚えてないわ」

「それは言い訳にはならん……」

「ま、まって!土門さん、アレ!」

土門の顔が近づく気配に、マリコは抵抗する。

「ちっ!なんだ!?」

マリコはスマホのライトをつけ、天井の隅を照らす。
そこには防犯カメラが……。

土門は、さぁーと青ざめる。

恐らく最高のアングルで、二人の濃厚接触なシーンが警備室では上映されていたに違いない。

「榊……。すまん」

しゅんと耳を垂れ、しょげかえった犬のような様子にマリコはくすっと笑う。

「随分と古そうな型式だから、この停電で……たぶん数時間分の録画は消えてしまったでしょうね。それに、ほら」

マリコはエレベーターのボタン辺りを照らす。

そこには、『警備員不在のため、非常時はこちらまでご連絡ください』と書かれており、電話番号が記載されていた。

「それじゃあ……」

「誰にも見られていないし、証拠も残ってないと思うわよ」

「お前…。そこまで分かっていながら……わざとだな?」

「だって、狼狽える土門さんが可愛かったんだもの♡」

「…………」

「子犬みたいだったわよ♪」

至極ご満悦なマリコであった。


後に、この話をマリコから聞き出した早月は一言。

「アレのどこをどう見れば、子犬になるわけ!?」

早月は、しばらく武者震いが止まらなかったという。




fin.



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