Love is all
皆が帰った後の病室で、二人はどっと疲労していた。
「まさか、こんな展開になるなんてなあ…。一応、挨拶の台詞とやらを考えていたんだが」
「そうなの!?娘さんを私に下さい、ってやつ?」
「いや、そこまで“まんま”じゃないがな」
土門は笑う。
「折角だから、言ってみて。聞いてあげる」
「結構だ。俺の気持ちは、もう十分聞いただろう?」
「うん……そうね。土門さんが私のこと、あんな風に見ていてくれたなんて驚いたわ」
「お前なぁ……」
「だって普段、そういう話はしないじゃない?」
「当たり前だろう。恥ずかしい……」
「それでも、たまには聞いてみたいわ」
「そういうもんか?」
「そういうもんよ!」
「うっ……。善処は、してみる」
マリコは苦いものでも飲み込んだような土門の顔を眺めて、くすくすと笑う。
その幸せそうな笑顔は、今の土門にとってどんな薬より特効薬だ。
「それにしても、お前は沢山の人に愛されているなあ。ご両親や、美貴、科捜研のメンバー。ああ見えて、藤倉部長もお前を気に入ってるだろう?」
「そうかしら?でも私が愛してほしい人は、たった一人よ」
「奇遇だな?俺もたった一人、そいつにだけ愛されれば十分だ」
「ふぅん……それは、誰?」
答えを聞こうと、マリコは土門へ顔を近づける。
「お前こそ、誰のことだ?」
土門はマリコを引き寄せ、逆に問い返す。
「私?私は………」
「俺は…………」
途切れた言葉の代わりに、重なる唇と唇が小さな音を発する。
幾度となく交わされる、それが答えだ。
今の二人の様子を表すなら、さしずめこんなところだろうか……?
――――― 愛こそ、すべて。
fin.
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