第一章
晴れた日の放課後、私の心は天気とは裏腹にどんよりと曇っていた。私__一ノ瀬 紫音 __は吹奏楽部に所属している高校二年生だ。担当楽器はフルート、次期部長として日々頑張っている、はず。
「くるみちゃん、そこの音程ズレてるよ。」
「はいッ!すみませんッ!!!」
この子はフルートパートの後輩の町田 くるみちゃん。私の学校は小編成〜中編成の規模の吹奏楽部なのでフルートは二人。私のこと少し怯えてるのかな……? いつも少しビビってる。もう少しラフでもいいのに。
「紫音!!」
鬼の血相をして私の横に入ってくる一人の先生。この人は吹奏楽部顧問の宮本先生。いつも厳しくて理不尽に怒る先生。__正直苦手な先生だ。私が後輩などにアドバイスとかすると「調子に乗らないで」と、理不尽に怒ってくる。今日も呼ばれ、廊下に出されるが、これもまた説教だろうな。
「紫音さん、また調子乗ってるよね? くるみさんも頑張っているんだからさ、そんな言い方はないんじゃない? 」
ほら、さっきの状況も知らないくせに、そんなこと言わないで欲しい。くるみちゃんが頑張っていることは誰よりも知っている。そんな言い方、どんな言い方だよ。……でも、くるみちゃんのビビっている理由が私の言い方なら、宮本先生の言っていることも筋が通る気もする。認めたくないが。
「……すいません。」
「何回言ったらわかるの!?いつもこの場面で反省しているふりしてまた同じこと繰り返してるじゃない!!」
だって、私が悪いとは思っていないんだもの。宮本先生は私が悪いと思っているものも私は悪く思っていないから、どこをどう治したらわからないし、それを聞いたところで先生は怒るだけだ。
周りの人は、私の態度が悪い、宮本先生が理不尽、どう思っているかわからないけど、私は宮本先生が理不尽、という考えだ。
気分が下がり切ったまま、私は家路につく。
「紫音〜、まーたくらい顔してる。」
「大輝くん……。」
大輝くん、クラスメイトで最近よく話している子だ。私の悩み事などを優しく聞いてくれて、私が何を言っても優しく受け止めてくれる。私はその優しさを利用し、ストレスを発散していた。
「また宮本?」
「……そう。宮本先生にまた怒られちゃって。」
今まで溜まっていた宮本先生へ対する愚痴を一気に零した。それでも、大輝くんは嫌な顔ひとつせず、優しい瞳で私を見つめていた。私を安心させるようなトーンで、「頑張ったね。」と声をかけてくれる。その大輝くんの優しさに涙が溢れそうになった。
「そっかそっか、辛かったね。でも、俺は紫音ちゃんは悪くないと思うな。」
「そうかな……。」
「だって、少し厳しくても、言い方が怖くても、後輩ちゃんのことを思って言ってるんでしょ? 」
大輝くんは、やっぱり優しい。私のことを一切責め立てず、それは違うんじゃないのかと思ったら「そうかな、俺は、〇〇の方がいいと思うよ? 」と優しく声をかけてくれる。その優しさに、私は溺れていった。
「ただいまー。」
そして家に着く私。父は普段仕事が忙しく夜遅くに帰ってくる。母は専業主婦でたまにパート・アルバイトで働いている。がだ、今日の家は闇に飲まれそうなほど静かだった。少し闇の余韻に浸りながら部屋の電気をつけた。そして机の上に置いてある少し違和感のある白い紙。
『今日遅くなります。ご飯は冷蔵庫に入っているから、レンチンして食べてね。母』
今日はパートの日だったのか。母や父の仕事は把握していない。把握する必要がない。冷蔵庫……一般家庭よりも中身は少ない方なのだろうか。冷蔵庫の真ん中に寂しそうに置かれた私の大好きなハンバーグ。脂が白く塊、大きな皿に小さく置かれたハンバーグが私の寂しさを一層高めるように存在感を放っていた。
味のしないハンバーグを食べ、私は自分の部屋に戻る。と、父の部屋に、何かの巡り合わせのように電気がついていた。私は運命を感じ、一筋の光に吸いこまれていった。
と、机の上に存在感を放っていた白い紙。(二回目)私はその紙を見てしまう。……ということは後から後悔した。こんなに、後で頭にこびりついて離れないなんてことあるのか。それほど私の人生の中で大きく衝撃を与えた一枚の紙だった。
一枚の紙、他の人にとっては何も存在がないような薄っぺらい紙。でも私にとってはこれが本当だった場合、これからの人生が大きく左右されてしまう。
『出生届 一ノ瀬紫音 白鳥莉奈』
「くるみちゃん、そこの音程ズレてるよ。」
「はいッ!すみませんッ!!!」
この子はフルートパートの後輩の
「紫音!!」
鬼の血相をして私の横に入ってくる一人の先生。この人は吹奏楽部顧問の宮本先生。いつも厳しくて理不尽に怒る先生。__正直苦手な先生だ。私が後輩などにアドバイスとかすると「調子に乗らないで」と、理不尽に怒ってくる。今日も呼ばれ、廊下に出されるが、これもまた説教だろうな。
「紫音さん、また調子乗ってるよね? くるみさんも頑張っているんだからさ、そんな言い方はないんじゃない? 」
ほら、さっきの状況も知らないくせに、そんなこと言わないで欲しい。くるみちゃんが頑張っていることは誰よりも知っている。そんな言い方、どんな言い方だよ。……でも、くるみちゃんのビビっている理由が私の言い方なら、宮本先生の言っていることも筋が通る気もする。認めたくないが。
「……すいません。」
「何回言ったらわかるの!?いつもこの場面で反省しているふりしてまた同じこと繰り返してるじゃない!!」
だって、私が悪いとは思っていないんだもの。宮本先生は私が悪いと思っているものも私は悪く思っていないから、どこをどう治したらわからないし、それを聞いたところで先生は怒るだけだ。
周りの人は、私の態度が悪い、宮本先生が理不尽、どう思っているかわからないけど、私は宮本先生が理不尽、という考えだ。
気分が下がり切ったまま、私は家路につく。
「紫音〜、まーたくらい顔してる。」
「大輝くん……。」
大輝くん、クラスメイトで最近よく話している子だ。私の悩み事などを優しく聞いてくれて、私が何を言っても優しく受け止めてくれる。私はその優しさを利用し、ストレスを発散していた。
「また宮本?」
「……そう。宮本先生にまた怒られちゃって。」
今まで溜まっていた宮本先生へ対する愚痴を一気に零した。それでも、大輝くんは嫌な顔ひとつせず、優しい瞳で私を見つめていた。私を安心させるようなトーンで、「頑張ったね。」と声をかけてくれる。その大輝くんの優しさに涙が溢れそうになった。
「そっかそっか、辛かったね。でも、俺は紫音ちゃんは悪くないと思うな。」
「そうかな……。」
「だって、少し厳しくても、言い方が怖くても、後輩ちゃんのことを思って言ってるんでしょ? 」
大輝くんは、やっぱり優しい。私のことを一切責め立てず、それは違うんじゃないのかと思ったら「そうかな、俺は、〇〇の方がいいと思うよ? 」と優しく声をかけてくれる。その優しさに、私は溺れていった。
「ただいまー。」
そして家に着く私。父は普段仕事が忙しく夜遅くに帰ってくる。母は専業主婦でたまにパート・アルバイトで働いている。がだ、今日の家は闇に飲まれそうなほど静かだった。少し闇の余韻に浸りながら部屋の電気をつけた。そして机の上に置いてある少し違和感のある白い紙。
『今日遅くなります。ご飯は冷蔵庫に入っているから、レンチンして食べてね。母』
今日はパートの日だったのか。母や父の仕事は把握していない。把握する必要がない。冷蔵庫……一般家庭よりも中身は少ない方なのだろうか。冷蔵庫の真ん中に寂しそうに置かれた私の大好きなハンバーグ。脂が白く塊、大きな皿に小さく置かれたハンバーグが私の寂しさを一層高めるように存在感を放っていた。
味のしないハンバーグを食べ、私は自分の部屋に戻る。と、父の部屋に、何かの巡り合わせのように電気がついていた。私は運命を感じ、一筋の光に吸いこまれていった。
と、机の上に存在感を放っていた白い紙。(二回目)私はその紙を見てしまう。……ということは後から後悔した。こんなに、後で頭にこびりついて離れないなんてことあるのか。それほど私の人生の中で大きく衝撃を与えた一枚の紙だった。
一枚の紙、他の人にとっては何も存在がないような薄っぺらい紙。でも私にとってはこれが本当だった場合、これからの人生が大きく左右されてしまう。
『出生届 一ノ瀬紫音 白鳥莉奈』
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