第二章

「大雅様?純恋と距離を置かないと……どうなるかわかりますよね?」
「どう言うこと。」
「純恋がどうなっても、知りませんよ?」

 *

「純恋ちゃん、一旦距離を置こう。」

 そんなことを言われた午後1:00頃の屋上。昼休憩の時に大雅くんと久しぶりにお昼ご飯を食べれるとウキウキしていた。なのにだ、この有様。空は私の気持ちを表しているのかどんよりと曇っていた。大雅くんは、何故私と距離を置こうと思ったのか何一つ言ってくれなかった。

「なんで……。」
「ごめんね?僕が悪いの。」

 大雅くんが悪いって……。大雅くんに何があったの?大雅くんは、何をしたの?何故、こんなことになってしまったのだろうか。ごめん、って言われても、私は納得できないし、大雅くんも納得していない様子。

「大雅くんに何があったの?」
「何もないよ、僕が距離置きたいなと思っただけ。」
「じゃあなんで!!」

 大雅くんは私がこれ以上何を言っても、答えてくれなかった。何を聞いても「ごめん。」の一点張り。大雅くんの人の良さが、こんなところで悪く出ているなんて。そのまま大雅くんは教室へ戻って行った。私は一人屋上に残された。運が悪いのか、私の気持ちが落ち込んでいるのか、ぽつり、と雨が降り始めた。私は、チャイムの音と同時に教室へ戻った。

「純恋!?なんでそんなに濡れてるんや!?」

 四葉ちゃん……。四葉ちゃんは優しいから私を慰めてくれる。私に気を遣ってくれる。でも、今はそんな四葉ちゃんの優しさすら私には敵だった。

「四葉ちゃん、大丈夫だよ。」
「大丈夫じゃない人は大丈夫じゃないって言わへんのやで!ほら、保健室行くで!せんせー保健室行ってきます!」

 四葉ちゃんは先生の返事を待たずに私を引っ張って保健室に連れて行ってくれた。保健室に行くと先生はびっくりして私にタオルを渡してくれた。四葉ちゃんは私の背中を優しくさすって何があったか優しく聞いてくれた。先生は空気をよんでくれたのか職員室に行ってくれた。

「あのね……。」

 さっき、大雅くんとあった出来事を四葉ちゃんに全て話した。すると四葉ちゃんはいつもの明るい雰囲気ではなく、優しく包み込むような声で、「頑張ったね。」って言ってくれた。いつもと違う四葉ちゃんだったけど、私のために真剣に考えてくれてるんだって思って涙が溢れてきた。

「四葉ちゃん、大雅くんはなんで、あんなこと言ったんだろう。」
「そうやなぁ、おかざっきーは純恋と距離置きたいなんて言うはずないで?」

 おかざっきー……昨日連絡先交換して仲良くなったのかな。私の心当たりとしては"推し"。昨日、大雅くんにヲタクでショウくんが好き、って言っちゃったから引いちゃったのかもしれない。

「何、純恋は悪くないで?距離置こって言って理由言わないおかざっきーが悪いんやから。」

 また泣きそうになる。普段と違う四葉ちゃんの声に安心する。

「じゃあ、私が聞いたるわ。距離置こうと思った理由。」

 四葉ちゃんのその行動力、尊敬する。人のために自分の時間や、労力を削る、惜しまない人はすごいと思う。四葉ちゃんはそのままスマホを取り出し、大雅くんに連絡を入れた。今、授業中っていうことは言わないでおこう。

 *

 私の気分は晴れないまま家路に着く。そのまま家に帰ろうと家の前の道まできた時、私は目の前にある光景を疑った。美咲さんが、家の玄関から出て行くところを見てしまった。私は咄嗟に物陰へ隠れた。美咲さんが見えなくなったころに私は家に入った。

「ただいま〜。」
「あ、おかえり。」

 そのまま自分の部屋のベッドへダイブする。昼間、四葉に頼んだ大雅くんの件。ちゃんと聞き出せたのだろうか。スマホを開くと四葉からメッセージが届いていた。

四葉『おかざっきーなんも言ってくれへんだ。』

 四葉ちゃんにも何も言わない。……大雅くんは四葉ちゃんに言ったら絶対に私に言う、とわかっているのだろうか。なんで、大雅くんは私と距離を置こうと思ったのだろう。私がヲタクだから?それしか思いつかない。自覚がない私、最低だな。

四葉『そういえば、最近おかざっきーがくそ留美と話してるところ見たで。』

 留美に脅されている?留美ならありえる。留美が大雅くんに純恋と距離を置かないと何かする、的な。いや、留美なら私と別れて留美と付き合って、みたいなこと言いそうだな。だから、留美説は少ないな。

四葉『無理しやんといてな?』

 無理、はしてない。今の所、無理はしていない。無理は、したくない。なるべく。だが、人生無理をしないとどうにもならないこともある。今の私の人間関係、家庭環境、少しは無理をしないと周りに迷惑がかかったり、私が不利な状況に当たる可能性がある。それだけは避けたい。だから、少しだけ無理させて。

純恋『四葉ちゃんありがとう。』
四葉『全然大丈夫やで。一回おかざっきーに殴りに行こうと思ったけどな(笑)』
純恋『嘘だ!わら』

 文面ではいくらでも笑える。そんな表面上だけの笑いが、いつか私の内面からの笑いになりますように。
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