Souvenir
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ハリー・ポッターが魔法界に安寧をもたらしてから幾日――ホグワーツをはじめとする魔法界では、毎日が目まぐるしく忙しかった。何もかもが変わり、そして再生へと向かっていった。
そして今日も、大広間へと向かう生徒の波を潜り抜けて、ある場所へと繋がる廊下を駆ける姿が一つそこにはあった。
重苦しい雰囲気を纏うガーゴイルの前に着くと、彼女は上がった息を整える。ひとつ、ふたつと深呼吸したのち、口を開いた。
「ダンブルドア」
彼女の合言葉に従うかのように、ガーゴイルはその後ろから秘匿された階段を現した。
現れた階段を一つ一つ踏み締めて上へと登る。どこまで上がるのかというくらい長いそれを登りきれば、現れたのは扉だった。
切れかかった息を再度整えて、目の前の扉を二回程小気味良くノックをする。
「どなた?」
「マクゴナガル校長、私です。薬草学准教授マグル植物研究員の ナマエです」
「まぁ、 ナマエ。今扉を開けますね」
扉の向こうに居るであろうマクゴナガル校長の声が響く。そして目の前の扉がゆっくりと動くと同時に、彼女―― ナマエも足を一歩踏み出した。
扉を潜ればそこは、ホグワーツ歴代校長の絵画が眠る校長室だった。
「 ナマエ、今日はどうしたのです?」
マクゴナガルの言葉に ナマエは笑みを浮かべて、採取用の鞄に詰め込んでいた物を取り出す。そこにあったのは、白く小さな花を咲かせた草だった。
「あら……それはヒトリシズカ?」
「はい。今日は特別な日ですから」
「今日?今日は――」
そう言いながら机の上へと視線を向ければ、ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ新作の【当たればマグルのお菓子!吐くのはどの日だ?アドベントカレンダー】が一月九日を示していた。
マクゴナガルは、なるほど。とひとりごちた後、 ナマエに微笑んだ。
「たくさん伝えてあげなさい」
「お時間をくださり、ありがとうございます」
言うが早いか、マクゴナガルはさっと身支度を済ませると、先ほど ナマエが登って来た階段を下って行った。
しんと静まり返った校長室に一人残された ナマエは、ある絵画の前まで足を進める。布が被さったそれを手に取り、ゆっくりと布を外してやれば、そこには漆黒のローブを纏った、青白く痩せ細った男の姿が描かれていた。
「久しぶり、セブルス」
「……なぜ、ここへ来た」
セブルスと呼ばれた絵画は鬱陶しそうに眉根を寄せながら、その閉じていた瞼をゆっくりと開いた。
立てかけた絵画と向かい合うように ナマエは椅子を置くと、勢いよくそれに腰掛けた。ギッと椅子の悲鳴が響く。
「なぜ?なぜって聞いた?」
ナマエは「ありえない」とでも言いたげに目を開いた。
そんな ナマエをものともせず、セブルスは未だじっとこちらを見つめるのみだ。
どれくらいそうしていたのか。多分そんなに長くは無いのだろう。しかし ナマエにはあまりにも長い時間そうしていた様に感じた。目の前の肖像画は先ほどと何ら変わらない仏頂面を貫いている。そんなセブルスに根負けしたのだろう。ナマエは深く長いため息を一つ吐くと、子供に言い聞かせるかのように前のめりになる。
「ねえ、今日は一月九日だよ」
「知っている」
「日付は、でしょ!何の日かを聞いてるの!」
「何もない日だ」
「あるんだって!」
進展しない二人の推し問答に、他の絵画も何事かと視線を寄越す。が、興奮している ナマエはそれをものともせずセブルスに詰め寄る。
「もう!今日はセブルスの誕生日だってば!」
痺れを切らした ナマエの言葉に、セブルスはふん、と鼻を鳴らした。
「よくもそんなくだらない事を覚えているな、貴様は」
そんなセブルスの呆れを孕んだ一言に、 ナマエの興奮に血が上った頭は急激に醒めていった。
くだらない事――そう彼は言った。 ナマエにしてみればそれは全くもって違う認識だった。こうも伝わっていないとは、ほとほと目の前の男には呆れてしまう。
どうして私があなたの誕生日をずっと覚えているのか。
どうして私があなたの誕生日をずっと祝い続けているのか。
多分彼にはこの先、永遠に伝わらないだろう。そして私も伝える気は毛頭無い。この鞄の中にあるヒトリシズカの意味も、多分きっと、公になることは無い。
「……当たり前でしょう?学生の頃から毎年あれこれ考えて伝えて来たんだから」
「……そうだったな」
「だから今年も懲りずに来ました!今年もヒトリシズカです!」
ナマエの手の中には、小さく白い花を咲かせた先ほどのヒトリシズカが何本か束になっていた。それをセブルスの額縁近くに置いてやれば、セブルスはそちらにちらりと視線をやった後、一つ長く息を吐いた。
「……君は変わらないな」
「……呆れてる?」
「ほとほとにな。馬鹿のする事だ」
「良いじゃない。祝う気持ちは大事だよ」
「死んでなお、君のような馬鹿に祝われる我輩の身にもなれ」
「でも、そんな馬鹿に祝われて嬉しいでしょう?」
「……チッ」
ぐっと苦虫を噛み潰したように顔を顰めて押し黙ってしまったセブルスをくすくすと笑う。
おかしな話だなんて、自分が一番わかってるんだ。死者に祝言なんて。
「誕生日おめでとう、セブルス」
「……ああ」
変わってしまう私が、変わりもしないあなたに捧げる、変わらない愛の言葉。
そして今日も、大広間へと向かう生徒の波を潜り抜けて、ある場所へと繋がる廊下を駆ける姿が一つそこにはあった。
重苦しい雰囲気を纏うガーゴイルの前に着くと、彼女は上がった息を整える。ひとつ、ふたつと深呼吸したのち、口を開いた。
「ダンブルドア」
彼女の合言葉に従うかのように、ガーゴイルはその後ろから秘匿された階段を現した。
現れた階段を一つ一つ踏み締めて上へと登る。どこまで上がるのかというくらい長いそれを登りきれば、現れたのは扉だった。
切れかかった息を再度整えて、目の前の扉を二回程小気味良くノックをする。
「どなた?」
「マクゴナガル校長、私です。薬草学准教授マグル植物研究員の ナマエです」
「まぁ、 ナマエ。今扉を開けますね」
扉の向こうに居るであろうマクゴナガル校長の声が響く。そして目の前の扉がゆっくりと動くと同時に、彼女―― ナマエも足を一歩踏み出した。
扉を潜ればそこは、ホグワーツ歴代校長の絵画が眠る校長室だった。
「 ナマエ、今日はどうしたのです?」
マクゴナガルの言葉に ナマエは笑みを浮かべて、採取用の鞄に詰め込んでいた物を取り出す。そこにあったのは、白く小さな花を咲かせた草だった。
「あら……それはヒトリシズカ?」
「はい。今日は特別な日ですから」
「今日?今日は――」
そう言いながら机の上へと視線を向ければ、ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ新作の【当たればマグルのお菓子!吐くのはどの日だ?アドベントカレンダー】が一月九日を示していた。
マクゴナガルは、なるほど。とひとりごちた後、 ナマエに微笑んだ。
「たくさん伝えてあげなさい」
「お時間をくださり、ありがとうございます」
言うが早いか、マクゴナガルはさっと身支度を済ませると、先ほど ナマエが登って来た階段を下って行った。
しんと静まり返った校長室に一人残された ナマエは、ある絵画の前まで足を進める。布が被さったそれを手に取り、ゆっくりと布を外してやれば、そこには漆黒のローブを纏った、青白く痩せ細った男の姿が描かれていた。
「久しぶり、セブルス」
「……なぜ、ここへ来た」
セブルスと呼ばれた絵画は鬱陶しそうに眉根を寄せながら、その閉じていた瞼をゆっくりと開いた。
立てかけた絵画と向かい合うように ナマエは椅子を置くと、勢いよくそれに腰掛けた。ギッと椅子の悲鳴が響く。
「なぜ?なぜって聞いた?」
ナマエは「ありえない」とでも言いたげに目を開いた。
そんな ナマエをものともせず、セブルスは未だじっとこちらを見つめるのみだ。
どれくらいそうしていたのか。多分そんなに長くは無いのだろう。しかし ナマエにはあまりにも長い時間そうしていた様に感じた。目の前の肖像画は先ほどと何ら変わらない仏頂面を貫いている。そんなセブルスに根負けしたのだろう。ナマエは深く長いため息を一つ吐くと、子供に言い聞かせるかのように前のめりになる。
「ねえ、今日は一月九日だよ」
「知っている」
「日付は、でしょ!何の日かを聞いてるの!」
「何もない日だ」
「あるんだって!」
進展しない二人の推し問答に、他の絵画も何事かと視線を寄越す。が、興奮している ナマエはそれをものともせずセブルスに詰め寄る。
「もう!今日はセブルスの誕生日だってば!」
痺れを切らした ナマエの言葉に、セブルスはふん、と鼻を鳴らした。
「よくもそんなくだらない事を覚えているな、貴様は」
そんなセブルスの呆れを孕んだ一言に、 ナマエの興奮に血が上った頭は急激に醒めていった。
くだらない事――そう彼は言った。 ナマエにしてみればそれは全くもって違う認識だった。こうも伝わっていないとは、ほとほと目の前の男には呆れてしまう。
どうして私があなたの誕生日をずっと覚えているのか。
どうして私があなたの誕生日をずっと祝い続けているのか。
多分彼にはこの先、永遠に伝わらないだろう。そして私も伝える気は毛頭無い。この鞄の中にあるヒトリシズカの意味も、多分きっと、公になることは無い。
「……当たり前でしょう?学生の頃から毎年あれこれ考えて伝えて来たんだから」
「……そうだったな」
「だから今年も懲りずに来ました!今年もヒトリシズカです!」
ナマエの手の中には、小さく白い花を咲かせた先ほどのヒトリシズカが何本か束になっていた。それをセブルスの額縁近くに置いてやれば、セブルスはそちらにちらりと視線をやった後、一つ長く息を吐いた。
「……君は変わらないな」
「……呆れてる?」
「ほとほとにな。馬鹿のする事だ」
「良いじゃない。祝う気持ちは大事だよ」
「死んでなお、君のような馬鹿に祝われる我輩の身にもなれ」
「でも、そんな馬鹿に祝われて嬉しいでしょう?」
「……チッ」
ぐっと苦虫を噛み潰したように顔を顰めて押し黙ってしまったセブルスをくすくすと笑う。
おかしな話だなんて、自分が一番わかってるんだ。死者に祝言なんて。
「誕生日おめでとう、セブルス」
「……ああ」
変わってしまう私が、変わりもしないあなたに捧げる、変わらない愛の言葉。
1/1ページ
