Severus Snape
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夜も深まってきた頃。蝋燭の灯りがほんのりと薄暗い部屋を照らしている中、紙の擦れる音だけが聞こえる。ぺらり、ぺらりと一枚づつ噛み締めるように捲るその音を遮るように、扉から在室を確認するような控えめなノック音が鳴った。
一つ目のノック音は、部屋の主人であるナマエの耳を右から左へと通り過ぎてしまった。しばらくして、二度目の少し強めのノック音が響いた。
「我輩だ」
低く短く放たれた言葉に、ナマエは手元の本をパタリと閉じる。
ゆっくりと扉を開けば、やはり目の前にはいつもと変わらない、そのまま夜の闇に紛れてしまうような漆黒を身に纏った恋人の姿がそこにはあった。
変わらない恋人の姿にナマエは思わず口角を上げた。一瞬の出来事だったのだが、それを見逃される訳もなく、闇を纏った彼はそんなナマエにまた眉間に深い谷を作った。
「どうぞ、入って」
「失礼する」
「ああ、えっと……その辺に座って貰える?」
そそくさと部屋に入り、周りを見渡す彼にそう促す。
お茶の準備をしないと。ナマエはいつも彼が好んで飲んでいた――と記憶しているだけなので、実際に好みなのかはわからない――紅茶とクッキーを取りにキッチンへと足を進めた。
しばらくして準備したものを持ち部屋へと戻ると、外陰は脱げども漆黒を纏っていることに変りのない彼は、机の上をじっと眺めていた。
「あら、セブルス。その本に興味があるの?」
カチャリと食器の置かれる音が響く。そんなナマエの問いに、セブルスは視線をナマエに向けた後、もう一度机の上にある本に戻した。
「いや……別にそういう訳ではないのだが」
「だが?」
「……」
じっと本を見つめるセブルスの歯切れの悪い言葉に、ナマエは続きを促す。
セブルスはこの本に興味がある。そんなことは今までの彼の言動で手に取るようにわかった。だが、なぜか今日は彼の口から聞きたかった。
「……そうだな、興味はそそられる」
そう言うと、セブルスは机の上にあった本を掬い上げる。青と白で彩られたカバーは、今のこの部屋にはひどく浮いているように見えた。ぺらり、ぺらりと流し見るようにページを捲る音が響く。
「でもそれ、恋愛小説よ?セブルスがいつも読んでるお堅い薬学の本や、魔法に関する様な実用書ではないわ」
ナマエの一言にセブルスはページを捲る動作をピタリと止め、片眉を上げた。まずい、この動作をするときは、ええと――そう記憶を辿っていると、いつの間にか目の前にはとても不機嫌そうな彼が立っていた。
「貴様は我輩にはこのような物は読むに値しないと――そう言いたいのかね?」
「いや、そういう訳じゃなくて――」
じり、じり、と一歩づつ壁際へと追い詰められて行く。捲し立てる彼から目が離せなくて、後退りしかできない。
「ではどのような意味かね?似合わない、とでも言いたいのか?そんなもの我輩が一番よくわかっている」
「そんなこと言ってないじゃない!色んなことに興味があるのは悪いことではないわ!」
どん、と背中に衝撃が走ったかと思えば、後ろへの逃げ道は本棚で塞がれてしまっていた。横にするりと移動しようと思ったのも束の間、その動作は自身の右肩に勢いよく付かれたセブルスの手によって阻まれた。
「恋人が我輩のノックにも反応せず、熱心に読み耽っていたのだ。どんなものか気にもなるだろう」
セブルスはふん、と一つ鼻を鳴らすと、問答に満足したのかソファーへ背を預け、先ほどまで問答の中心となっていた本をしっかりと読み始めた。
恋人からの思ってもみなかった小さな嫉妬心に、ナマエはその場で顔を紅らめるしかなかった。
***
ぱたり、と本を閉じる音が響く。
正直、小さな嫉妬心で引き返せなくなった部分はあった。
最初はこんな物、面白くも何ともないと思っていた。他人の恋愛になぞ興味など微塵も無い。なぜこんな回りくどい事をするんだとか、ご都合主義にも程があるとか、我輩ならばこのような真似はせぬと何度も思った。しかし、読み進めて行くうちに、この男女は互いに不器用なだけなのだと気づいた。そこからの物語はとても心が揺さぶられるものがあった。
ふと隣に視線をやると、ナマエがうとうとと舟を漕いでいるのが見えた。物音を立てないように杖を振り、毛布を手元に手繰り寄せる。薄手の毛布をかけてやれば、丸まって幸せそうに眠り始めた恋人に、無意識に口角が上がる。
「……我輩は、貴様に幸せを与えられているか?」
恋愛小説を読んだからなのか、少し触発されてしまったらしい。
パチパチと薪の割れる音が響く。暖かな暖炉の火と、蝋燭の優しい灯りが二人を照らす。
セブルスは短く一つ息を吐くと、もうすっかり冷たくなってしまった紅茶に口を付けた。
「あなたがよく飲んでいるから」と毎回足を運ぶ度に振る舞ってくれる、甘みのないまっすぐな茶葉の香りが鼻を擽る。
夜遅くに押しかけて、小さな嫉妬心をむき出しにしても受け入れてくれた恋人に、自分は何かできるだろうか?
すやすやと眠る恋人の頭をぎこちなく撫でながら、なんとなく、ぼんやりとそう思った。
***
「まずいわ!やってしまった!」
がばりと勢いよく起き上がる。ナマエが意識を取り戻した時には東雲などとうに過ぎ去り、もうすでに外は明るく陽が昇っていた。
「……あ、セブルス!」
ふと、姿が見えない彼を思い出す。昨日――正確に言えば今日の真夜中なのだが――、本を読んでいたところに恋人のセブルス・スネイプが訪ねて来たのは覚えている。お茶とお菓子を用意した所も大丈夫だ。記憶に違いはない。そして、その読んでいた本をセブルスが読みたいと言い出したのも覚えている。めちゃくちゃ意外だったから。そこから、そう――なんだかとっても恥ずかしいような、嬉しいような気持ちになって、そして――記憶が飛んで今に至るという訳だ。
途中の記憶が無い、ということはつまり。
「……オブリビエイトされた……?」
「阿呆か」
混乱した頭で状況を整理していると、聞き慣れた声が真後ろから聞こえて来た。体ごとそちらへ向けると、今日も真っ黒づくめの恋人が本の山からチラリと顔を覗かせた。
「わ!びっくりした!でも忘却呪文じゃなくてよかった!」
「我輩がそんな真似をするとでも?」
ナマエの驚きの声にセブルスはふんと鼻を鳴らすと、視線を手元の本に戻す。セブルスは有事があればオブリビしそうだ、なんて口が裂けても言えない。そんなことをぼんやりと思っていると、体ごと積まれた本の山の中へ行ってしまったセブルスにナマエは目を丸くした。
「……いや、ちょっと待って⁉︎どれだけ読んだの⁉︎」
「……ここに置いてあるものがそれだが、何かね?」
「いや、いやいや……山になってるじゃない!」
まるまる一夜読み耽っていたという事実に、ナマエは心底驚いた。
そんなに面白かったのだろうか。いや、確かに一日中読んでいた事もあるが、それは私の話なだけで――色々な感情がぐるぐる回る。
そんなナマエを訝しげに眺め、セブルスは口を開いた。
「頭を空っぽにして読む分には面白い」
「面白かったのなら良いけども!」
「……だが気になる事がある。どうしてどれも登場人物の男は同じ名前なのだ」
ぎくり。ナマエの肩が一つ大きく動いた。恋愛小説なんて大きく括ってしまったが、この本はいわゆるそういう創作物の類いだ。書籍化よ、ありがとう。と大好きな作品達を買い漁って、ふと読み返していたものだ。
しまった、こんなに興味を持たれるなんて思っても見なかったから、油断した。
そんな後悔は今となっては後の祭りだった。
「基本的な性格などは同じだが……女性の名前はどれも違う。これはなんだ?」
セブルスの問いに変な汗が背中を伝う。いや、別にやましいことじゃ無い。創作物の設定を伝えるだけじゃないか。好きなものを好きと言って何が悪い。何をこそこそと隠す必要があるのか。
ええい、どうにでもなれ!と意を決して口を開く。
「えっと、それは……」
しかしその声は低く、だが優しい声にかき消された。
「しかし、だ。これだけこの男を題材とした話がごまんとあるのだ。この男とその相手である女は、さぞ愛され、そして幸せなのだろうな」
優しく目を細め、手元の本を眺めるセブルスに、ナマエは声が出なかった。なぜだか嬉しいような、そんなむず痒い気持ちが身体から込み上げてくる。
そう、その本達がなければ、自分は原作にも創作物たちにも、興味も愛情も勇気もここまで湧かなかっただろう。
好きなものを認めてもらえた。それだけで、ナマエの心はじんわりと温まった。
「その本達が、セブルスに会わせてくれたんだよ」
「……そうか」
セブルスは一つ小さく納得したようにつぶやくと、杖を取り出し、トントンとリズムよく本の山を叩いた。ふわふわと自分から棚へと戻って行く本達。
まるで蝶のようにひらひらと空を舞うその本達を眺めていると、隣にセブルスが腰をかけたのが視界の端にちらりと見えた。ぎしりとソファーのスプリングが音を立てる。
「それについてはこやつらに感謝せねばな。……しかし、もうこの本は必要ないだろう。今は我輩と共に居るのだ。もう少しこちらを見て欲しいものだ」
その言葉にハッと隣を見やる。
隣に腰掛ける彼の顔は真反対を向いてしまっているが、べたついた黒髪の間から覗く耳がほんのりと紅く色づいているのがわかった。
「セブルス?」
「……なんだ」
ぶっきらぼうに返事を返す恋人に、無意識に口角が上がる。
「珍しいね」
彼がこうやって気持ちをストレートに言葉にするのは珍しい。いつもはもっとぶっきらぼうで、言葉が足りないから真意を掴むのが難しい事が多いのに。
くすりと笑ってそう言えば、耳を紅くした彼はこちらをちらりと見た。大好きな漆黒の目とかちりと視線が合うと、その目は愛おしいものを眺めるように細められた。
「たまにはな」
その優しく放たれた一言に、ナマエもまた伝染したかのように顔を紅らめた。
ーーーー
旧フォレスト閉鎖と聞いて、あまりの衝撃に虚無感に襲われて書いたものでした。
あの時、数多のセブ夢サイト様に出会っていなければ筆を取っていなかったと思います。作品を公開されていたすべての作者様へ感謝を込めて。
一つ目のノック音は、部屋の主人であるナマエの耳を右から左へと通り過ぎてしまった。しばらくして、二度目の少し強めのノック音が響いた。
「我輩だ」
低く短く放たれた言葉に、ナマエは手元の本をパタリと閉じる。
ゆっくりと扉を開けば、やはり目の前にはいつもと変わらない、そのまま夜の闇に紛れてしまうような漆黒を身に纏った恋人の姿がそこにはあった。
変わらない恋人の姿にナマエは思わず口角を上げた。一瞬の出来事だったのだが、それを見逃される訳もなく、闇を纏った彼はそんなナマエにまた眉間に深い谷を作った。
「どうぞ、入って」
「失礼する」
「ああ、えっと……その辺に座って貰える?」
そそくさと部屋に入り、周りを見渡す彼にそう促す。
お茶の準備をしないと。ナマエはいつも彼が好んで飲んでいた――と記憶しているだけなので、実際に好みなのかはわからない――紅茶とクッキーを取りにキッチンへと足を進めた。
しばらくして準備したものを持ち部屋へと戻ると、外陰は脱げども漆黒を纏っていることに変りのない彼は、机の上をじっと眺めていた。
「あら、セブルス。その本に興味があるの?」
カチャリと食器の置かれる音が響く。そんなナマエの問いに、セブルスは視線をナマエに向けた後、もう一度机の上にある本に戻した。
「いや……別にそういう訳ではないのだが」
「だが?」
「……」
じっと本を見つめるセブルスの歯切れの悪い言葉に、ナマエは続きを促す。
セブルスはこの本に興味がある。そんなことは今までの彼の言動で手に取るようにわかった。だが、なぜか今日は彼の口から聞きたかった。
「……そうだな、興味はそそられる」
そう言うと、セブルスは机の上にあった本を掬い上げる。青と白で彩られたカバーは、今のこの部屋にはひどく浮いているように見えた。ぺらり、ぺらりと流し見るようにページを捲る音が響く。
「でもそれ、恋愛小説よ?セブルスがいつも読んでるお堅い薬学の本や、魔法に関する様な実用書ではないわ」
ナマエの一言にセブルスはページを捲る動作をピタリと止め、片眉を上げた。まずい、この動作をするときは、ええと――そう記憶を辿っていると、いつの間にか目の前にはとても不機嫌そうな彼が立っていた。
「貴様は我輩にはこのような物は読むに値しないと――そう言いたいのかね?」
「いや、そういう訳じゃなくて――」
じり、じり、と一歩づつ壁際へと追い詰められて行く。捲し立てる彼から目が離せなくて、後退りしかできない。
「ではどのような意味かね?似合わない、とでも言いたいのか?そんなもの我輩が一番よくわかっている」
「そんなこと言ってないじゃない!色んなことに興味があるのは悪いことではないわ!」
どん、と背中に衝撃が走ったかと思えば、後ろへの逃げ道は本棚で塞がれてしまっていた。横にするりと移動しようと思ったのも束の間、その動作は自身の右肩に勢いよく付かれたセブルスの手によって阻まれた。
「恋人が我輩のノックにも反応せず、熱心に読み耽っていたのだ。どんなものか気にもなるだろう」
セブルスはふん、と一つ鼻を鳴らすと、問答に満足したのかソファーへ背を預け、先ほどまで問答の中心となっていた本をしっかりと読み始めた。
恋人からの思ってもみなかった小さな嫉妬心に、ナマエはその場で顔を紅らめるしかなかった。
***
ぱたり、と本を閉じる音が響く。
正直、小さな嫉妬心で引き返せなくなった部分はあった。
最初はこんな物、面白くも何ともないと思っていた。他人の恋愛になぞ興味など微塵も無い。なぜこんな回りくどい事をするんだとか、ご都合主義にも程があるとか、我輩ならばこのような真似はせぬと何度も思った。しかし、読み進めて行くうちに、この男女は互いに不器用なだけなのだと気づいた。そこからの物語はとても心が揺さぶられるものがあった。
ふと隣に視線をやると、ナマエがうとうとと舟を漕いでいるのが見えた。物音を立てないように杖を振り、毛布を手元に手繰り寄せる。薄手の毛布をかけてやれば、丸まって幸せそうに眠り始めた恋人に、無意識に口角が上がる。
「……我輩は、貴様に幸せを与えられているか?」
恋愛小説を読んだからなのか、少し触発されてしまったらしい。
パチパチと薪の割れる音が響く。暖かな暖炉の火と、蝋燭の優しい灯りが二人を照らす。
セブルスは短く一つ息を吐くと、もうすっかり冷たくなってしまった紅茶に口を付けた。
「あなたがよく飲んでいるから」と毎回足を運ぶ度に振る舞ってくれる、甘みのないまっすぐな茶葉の香りが鼻を擽る。
夜遅くに押しかけて、小さな嫉妬心をむき出しにしても受け入れてくれた恋人に、自分は何かできるだろうか?
すやすやと眠る恋人の頭をぎこちなく撫でながら、なんとなく、ぼんやりとそう思った。
***
「まずいわ!やってしまった!」
がばりと勢いよく起き上がる。ナマエが意識を取り戻した時には東雲などとうに過ぎ去り、もうすでに外は明るく陽が昇っていた。
「……あ、セブルス!」
ふと、姿が見えない彼を思い出す。昨日――正確に言えば今日の真夜中なのだが――、本を読んでいたところに恋人のセブルス・スネイプが訪ねて来たのは覚えている。お茶とお菓子を用意した所も大丈夫だ。記憶に違いはない。そして、その読んでいた本をセブルスが読みたいと言い出したのも覚えている。めちゃくちゃ意外だったから。そこから、そう――なんだかとっても恥ずかしいような、嬉しいような気持ちになって、そして――記憶が飛んで今に至るという訳だ。
途中の記憶が無い、ということはつまり。
「……オブリビエイトされた……?」
「阿呆か」
混乱した頭で状況を整理していると、聞き慣れた声が真後ろから聞こえて来た。体ごとそちらへ向けると、今日も真っ黒づくめの恋人が本の山からチラリと顔を覗かせた。
「わ!びっくりした!でも忘却呪文じゃなくてよかった!」
「我輩がそんな真似をするとでも?」
ナマエの驚きの声にセブルスはふんと鼻を鳴らすと、視線を手元の本に戻す。セブルスは有事があればオブリビしそうだ、なんて口が裂けても言えない。そんなことをぼんやりと思っていると、体ごと積まれた本の山の中へ行ってしまったセブルスにナマエは目を丸くした。
「……いや、ちょっと待って⁉︎どれだけ読んだの⁉︎」
「……ここに置いてあるものがそれだが、何かね?」
「いや、いやいや……山になってるじゃない!」
まるまる一夜読み耽っていたという事実に、ナマエは心底驚いた。
そんなに面白かったのだろうか。いや、確かに一日中読んでいた事もあるが、それは私の話なだけで――色々な感情がぐるぐる回る。
そんなナマエを訝しげに眺め、セブルスは口を開いた。
「頭を空っぽにして読む分には面白い」
「面白かったのなら良いけども!」
「……だが気になる事がある。どうしてどれも登場人物の男は同じ名前なのだ」
ぎくり。ナマエの肩が一つ大きく動いた。恋愛小説なんて大きく括ってしまったが、この本はいわゆるそういう創作物の類いだ。書籍化よ、ありがとう。と大好きな作品達を買い漁って、ふと読み返していたものだ。
しまった、こんなに興味を持たれるなんて思っても見なかったから、油断した。
そんな後悔は今となっては後の祭りだった。
「基本的な性格などは同じだが……女性の名前はどれも違う。これはなんだ?」
セブルスの問いに変な汗が背中を伝う。いや、別にやましいことじゃ無い。創作物の設定を伝えるだけじゃないか。好きなものを好きと言って何が悪い。何をこそこそと隠す必要があるのか。
ええい、どうにでもなれ!と意を決して口を開く。
「えっと、それは……」
しかしその声は低く、だが優しい声にかき消された。
「しかし、だ。これだけこの男を題材とした話がごまんとあるのだ。この男とその相手である女は、さぞ愛され、そして幸せなのだろうな」
優しく目を細め、手元の本を眺めるセブルスに、ナマエは声が出なかった。なぜだか嬉しいような、そんなむず痒い気持ちが身体から込み上げてくる。
そう、その本達がなければ、自分は原作にも創作物たちにも、興味も愛情も勇気もここまで湧かなかっただろう。
好きなものを認めてもらえた。それだけで、ナマエの心はじんわりと温まった。
「その本達が、セブルスに会わせてくれたんだよ」
「……そうか」
セブルスは一つ小さく納得したようにつぶやくと、杖を取り出し、トントンとリズムよく本の山を叩いた。ふわふわと自分から棚へと戻って行く本達。
まるで蝶のようにひらひらと空を舞うその本達を眺めていると、隣にセブルスが腰をかけたのが視界の端にちらりと見えた。ぎしりとソファーのスプリングが音を立てる。
「それについてはこやつらに感謝せねばな。……しかし、もうこの本は必要ないだろう。今は我輩と共に居るのだ。もう少しこちらを見て欲しいものだ」
その言葉にハッと隣を見やる。
隣に腰掛ける彼の顔は真反対を向いてしまっているが、べたついた黒髪の間から覗く耳がほんのりと紅く色づいているのがわかった。
「セブルス?」
「……なんだ」
ぶっきらぼうに返事を返す恋人に、無意識に口角が上がる。
「珍しいね」
彼がこうやって気持ちをストレートに言葉にするのは珍しい。いつもはもっとぶっきらぼうで、言葉が足りないから真意を掴むのが難しい事が多いのに。
くすりと笑ってそう言えば、耳を紅くした彼はこちらをちらりと見た。大好きな漆黒の目とかちりと視線が合うと、その目は愛おしいものを眺めるように細められた。
「たまにはな」
その優しく放たれた一言に、ナマエもまた伝染したかのように顔を紅らめた。
ーーーー
旧フォレスト閉鎖と聞いて、あまりの衝撃に虚無感に襲われて書いたものでした。
あの時、数多のセブ夢サイト様に出会っていなければ筆を取っていなかったと思います。作品を公開されていたすべての作者様へ感謝を込めて。
